アマゾンとトヨタ2006年02月15日 10:07

今朝の日経に「アマゾンが直接仕入れ販売」の記事が載った。取次ぎを通さずに版元から直接仕入れ、直接購入者(読者)に配送するという態勢に転換するということだ。 前提には昨年市川に建設した大型物流センターがある。在庫能力が大幅にアップした。もちろんここで注目したいのは、このアマゾンの「攻勢」が日本における図書流通を大きく変えるだろうという点だ。これまでは、小売ルートのカットがメインだった。今後は卸段階が迂回される。いわゆるネット通販(Eコマース)による「中抜き」の完成ということになる。しかも最近大手書店でも置きたがらなくなった専門書も積極的に版元から取り寄せて在庫するという。われわれ売れない本を出している者にとっては「朗報」だ。しかし、と思う。昨年読んだ横田増生著『潜入ルポ アマゾン・ドット・コムの光と影―躍進するIT企業・階層化する労働現場』情報センター出版局を想い出す。これは、かつて80年代に話題を呼んだ鎌田慧著『自動車絶望工場―ある季節工の手記』(今だと講談社文庫)を念頭に取り組まれた本だ。鎌田の本は、周知のように、ジャパン・アズ・ナンバーワンといわれた日本経済を牽引するトヨタの絶望的な労務管理を抉ったものだった。必ずしも読みやすいものではなかったが、その心意気に感じて読んだものだ。そして横田増生の本。これも過酷な労働条件下での就労を強いられているアマゾン労働者の実態を闡明したものだ。脚光を浴びるネット企業の「実態」がいかなるものか、普段便利に利用しているアマゾンの経営姿勢のおぞましさが十分に伝わってくる刺激的な一冊。つまり、出版部数がせいぜい一千部どまりのわれわれの本に「朗報」とばかり喜んではいられない。この「攻勢」がヨリ惨烈な労働強化の下でのみ実行可能かもしれないからだ。

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