「頭の体操」か、「脳年齢をためす」ために2006年06月21日 22:16

『日経MJ』が年2回発表している「ヒット商品番付」。本日号に、2006年上期の番付が載った。東西の横綱は、それぞれ「脳を鍛えるゲーム」と「ダ・ヴィンチ・コード」だった。同紙は、「ともに大人が頭脳を働かせ、謎解きを楽しむ商品」だが「日本経済が浮揚する手応えを確かめつつ、一方では少子化が着実に進行。自分を取り巻く経済と社会の変化に対する不安心理を『遊び心で刺激するソフト』や『アタマを使うエンターティンメント』がすくいあげた」と指摘する。しかし、これだけでは分析したことにはならない。例えば、少子化というより「高齢化」がポイントということもある。老化のマイナスをマイナスすると信じて「脳トレーニング」にはげむという解釈のほうがはるかにリアリティに富む。単純な計算や読み書きの能力を練習するドリルが売れているなかに、せめて「いまの脳力」を維持したいと思う中高年のいじらしさが見え隠れしている。

一方、「ダ・ヴィンチ・コード」。これは謎解きにひきつけられるということだけではなく、むしろグローバリゼーションの精神的支柱となっている「キリスト教」の問題としてとらえることが必要なのではないか。

ともあれ、今期の「ヒット商品番付」の東西横綱の意味を読み解くことは、「脳年齢」が試される作業といえそうだ。

その点で、「脳ブーム」の仕掛け人の一人、 茂木健一郎の主張が参考になる。現在は「コンピュータにはまねの出来ない人間の能力が求められる。すなわち、他者とコミュニケーションする能力と、新しいものを生み出す創造性である」。「脳ブーム」は、このことに連動してこそ意味を持つ、と強調する。「正解の決まった問題を素早くこなすのは、コンピュータが得意」とするところであり、ヒトにとってはまさに「人間としての総合力が問われる」と心得るべし、と。