インドのこと―補足2006年09月20日 11:46

インドについて2つほど補足しておく。1つは、インフラが質量ともにまったく話にならない という点。1つは、労働組合の“重さ”という点。

まずインフラについて。帰国間際 に無線LANスポットを求めて彷徨したことは、昨日「『インドにて―その8』がぬけた事情 ―」 としてエントリーした。「フツーはそこまでやらない」のをあえて試みたのは、インドの主要 空港の通信インフラの現実を確認したかったというのが最大の理由だった。非常に不便、という のを実感した。成田に着いて、成田エクスプレスで東京駅に向かう際に、ネット接続ができるの とはわけが違う。インドにおける通信インフラの現状は、“IT先進国”の実態が奈辺にあるのか を示唆しているように思う。通信インフラばかりではない。道路の実状はもっと酷い。例えば「インドに て―その6」にも書いたように、モータリゼーションに対応可能な道路は極端に言えば幹線道路 だけだ。大都市のデリー、ムンバイ、プネ、バンガロール、チェンマイ、コルカタを結ぶ国道(実態は産業道路)がそれ。他は非常に質が悪い。モータリゼーションをこのまま推進拡大することに伴う 負の問題を考える必要はあるが、自動車も社会の一要素として位置づけるのであれば、きわめて 重要な問題となる。乾季が来て道路を整備し、支障が最小限になるのもつかの間、一端雨季に入 るや道路はクルマではなく雨水の通路と化す。次の乾季の当初、ものすごい凸凹道が出現する。 昔、1950年代の初め日本でも「田舎のバスは 、おんぼろ 車 。凸凹 道 を ガタゴト走る 」と 歌った。しかし雨季、乾季の周期がある分、現在のインドの窮状はより深刻だ。電力事情の問題もある。 1日何回か必ず停電する。超高級と冠がつくホテルやレストランももちろん例外ではない。ただし、こ うしたところには必ず自家発電設備が用意されている。24時間稼動する工場ももちろん自前のDynamo をもち、停電にそなえる。ビジネスにとってはコストアップ要因となるのはいうまでもない。

もう1つの労働組合の“重さ”。例えば、これまで名だたる日本の企業がインドに進出しては失敗 する、という事例はたくさんあった。日本企業と限らず、“勝ち組”になるか“負け組み”になるか の分かれ目は、労働組合にどう対応するのかという一点にあると聞いた。1990年代初めまでの社会 主義的政策がいまもよく効いている。労働者を解雇する場合には州政府の許可を必要とする。日本 の現状とは違って、簡単には“首にできない”。半年(6ヶ月)勤務すると自動的に正規雇用となる という前提もある。このあたりがビジネス側にとって“深刻な頸木(くびき)”となっている。ある 日本企業のゼネラルマネージャーが「終身雇用体制が最も安定的な経営に結びつくのはわかっている のだが、毎年賃金が上がるし、組合対策も考えなければならないので、できるだけ臨時社員の割合 を多くしている」とポロッと言っていたのが耳に残る。“毎年賃金が上がる”と客観的な言い方を しているのは、毎年5月頃に各州政府が企業の定期昇給とは別に賃金を上げるガイドラインを示すこ とに起因している。ビジネスの展開が、いいかえれば利潤追求の試みが、実は労働者の“主体的”意思と(州) 政府が発動するコントロールによって左右される仕組みが実にわかりやすい形で存在しているのである。企業 と労働者と公権力の3つの主体が社会を構築する、そのありようを具体的に教えてくれる。

本日、まもなく自民党の新総裁が決まる。一昨日、帰国後みたNews23(TBS)に3人の候補者が出ていた。 安倍が、抜本的?教育改革を念頭に「グローバリゼーション進展の下、日本もこの動きについていくには グローバルに通用する優秀な人材を育成する必要がある。いまの平等主義的教育ではたちうちできない」 というような趣旨の発言をしていた。これは見逃せないように思う。問題は「グローバリゼーション」を大前 提にして社会を構築するのは果たして自明な選択なのか、ということがあるからだ。

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