オッズ1.1倍の“意味”2006年10月02日 17:18

世界でも最高峰の競馬レースといわれる「凱旋門賞」。ディープインパクト(武豊騎乗)の着順は3位だった。 レースが行なわれたロンシャン競馬場は ナポレオン3世の意により作られたとか。 そもそもフランスの競馬は、ルイ14世の時代に始まったといわれる。ルイ14世(太陽王)といえば、絶対王政の中心人物であり、重商主義政策を推進 した当人である。ヴェルサイユ宮殿を建てたことは誰もが知っているし、その治世時にモリエール、ラシーヌたちがいたことも常識だ。競馬はそうした 文化の一環として誕生した(のだろう)。今回NHKが中継した様子から、正装/盛装してロンシャン競馬場に赴く人たちが見てとれ た。“賭け事”に臨む際の、“賭け事”の発する妖しい魅力を前にした正統なたたずまいとはこれをいう、とでもいいたげな風情。ロンシャン競馬場に現 われたディープインパクトは、こうした“文化としての競馬”をしかとうけとめ、端麗かつ凛呼とでも形容するのがふさわしい姿をしていた。

ところで、例えば朝日には ロンシャン競馬場に5千人もの日本人が殺到し、正装した英国婦人が「ジャパニーズ、クレージー」と眉をひそめた、とある。 開場の11時、正門の鉄さくが開くと、先頭に並んでいた日本人の若者10人ほどが、ゴール前の好位置をゲットすべくスタンドへと全力 疾走し、勢い余って1人の靴が脱げる本気ぶりに、競馬場職員からどよめきが起きた、とも。 今年だけでも、WBC、トリノ五輪、W杯ドイツ大会と立て続けに殺到劇を演じてきたジャパニーズ。今回の標的は「凱旋門賞」だった というわけである。文化の中に位置づけられた競馬、とはまったく無縁な次元での“ドタバタ”。

ディープインパクトの単勝オッズは、1.1倍だった。数千人単位のジャパニーズ・サポーターが、記念品やおみや げやおそらくはネット販売のグッズとして買ったのが、その背景となったのだろう。“賭け事”に臨む際に、“賭け事”の発する妖しい 魅力を相対化するジャパニーズ・スタイルとでもいえばいいのか。ん、なわけないか・・。

本読みの“ある物忘れ対策”2006年10月03日 19:12

本を読んでいるときに、他の書物が引用されていたり、紹介されていたりするのはごく ありふれたこと。あるいはただ参考文献としてだけ挙げられている場合もある。いずれ にせよ、読み手として何らかの勘が働き、ぜひ目を通すべき文献だと思った時、最近は 何かと日常的に負ぶさっている書店にネットで即注文することが多くなった。外出する ときも、ほぼ常にノート型PCをもち、ネットに入れる装備だけはもっているので、一応 “どこでもドア”なのである。

ところが、思い立ったら即発注というこのスタイルが結構後始末に困るという意味で厄 介になるケースが増えてきた。デジタル財のように、「サプライ・オン・デマンド」で注文 したら直ちに手元に届くというのであればもちろん問題はない。しかし、早くて2日後、 平均的には4,5日近く経過したのちに落手ということになるので、多くの場合す でにリアルタイムでは読む本が別になっている。したがって、届いた本をなぜ注文した のかについて、その必然の経路がまことにあいまいになってしまうのである。物忘れの 典型的症状といっていい。

昨日届いた『エコノミスト』(毎日新聞社)10月10日号。 これに日垣隆がちょっとしたアイデアを書いている(『敢闘言』)。日垣は(も)、「小 さいころから常に物を忘れるので、忘れてもいいように」いろいろな対策を講じてきた らしい。で、上記の問題を当方と同じように抱えているようだ。そして曰く。「たまたま 読んでいた本で別の本が紹介されていたときは、読みながらそのページに付箋を貼り、読 了後にそのページと表紙をコピーして、目的の本が到着したらすぐ中に挟んでおく。その 本が必要だった理由は、紙が覚えてくれている。」はたして実用に耐えうる方法だろうか? たぶん、「こと」はこれほど単純ではない・・。でも、少しだけ試してみよう、かなぁ。

規格「魚」と規格外「魚」2006年10月05日 22:48

NHKの「今朝の特集」(7:55頃だったと思う)。規格「魚」と規格外「魚」の話題を取り上げていた。 「魚」もついにここまで来たのか、とちょっとショックを受けた。例えばアジ。13センチのアジは 1Kg30円なのに、23センチのものは1Kg600円。10センチの大きさ(長さ)の違いが値段では20倍ほど の差となる。なぜか?スーパーの中で魚をさばくのに、小さな魚は効率がよくないから、というのが その理由。アジであれば、22-23センチ、180gの規格が「塩焼き」や「煮付け」に最適だから、これ を基準にすると、小さい魚はさばく作業効率の悪い規格外となってしまうのだとか。そういえば最近 は「22-23センチ、180g」ほどのアジが2匹ないし3匹のセットで並べられてきれいにパックされてい ると思い至った。

かつて1960年代の高度経済成長期。曲がったきゅうりが商品の範疇から 抹消された。まっすぐなきゅうりはダンボールに規格の数だけきちんと入るが、曲がっていると一箱 に必要な数が入らないからだ。巷では「曲がったきゅうりはおいしくない」といわれなき中傷がはびこって今に至る。

そして現在。魚にも規格という範疇が適用されるようになった。アジのほかには、秋刀魚の30センチという規格。これだと一般的なグリルにそっくり収まる。烏賊の場合は23センチ。2人前のイカ刺にちょうどいいらしい。「市場原理」は魚まで規格の網にかけてしまった。

とはいえ一方では、規格外を商品化するしたたかさも。作業効率のよくない小さいアジは まとめてミンチし、真空パック詰めにして「そのまんまアジ」と名づけられて売られている。 つみれ、ハンバーグ、ぎょうざに使えるので結構人気が高いらしい。捨てるムダも出さずというわけだ。 「商品外」というおこぼれも消えた!ノラはいう。まこと飼いネコじゃないと生きられない時世じゃにゃぁ・・。

日産、大幅減益2006年10月07日 22:21

今朝の日経(12版、15ページ)に「日産自、再建後初の減益」の記事。日産自動車の 9月中間期連結業績が前年同期を大幅に下回ったもよう、とある。日米での乗用車の 販売不振が背景にあるらしい。半期ベースで減益になるのは経営再建後初めてとか。 先日(10月4日)、GMとの提携交渉が破綻したばかりだが、ゴーン改革の効果もどう やら急速に薄れてきているようだ。

それまでの取引慣行(長期取引慣 行)を徹底的に見直し、一定の品質が確保されることを前提に、グローバルな観点から最 も安価な取引先を探り当ててこれと契約するという世界最適調達のモデルとなってきたのが ゴーン改革。いわゆる新自由主義の考えに基づく経営思想を体現したものにほかならなかった。 これがいま難局に逢着し始めた。

片やトヨタ。年間の世界販売台数でGMを追い抜いて 世界トップとなるのは時間の問題といわれる。トヨタは、従来の長期取引慣行を維持し つつ、優良企業を自陣に引き寄せて取り込み、いわゆるファミリーを拡大する戦略を敷いてきた。 もちろんトヨタが新自由主義の考えから免れているわけではないが、その思想を経営戦略にスト レートに持ち込んでいるというのでもない。いわばトヨティズムというフィルタをかけ自前の新自 由主義的型を生み出したというのがおそらくは正解だろう。

日経の1面には、日本経済 の景気拡大が“いざなぎ景気”(1965-70年)を超え、戦後最長となるのは確実との記事もある。 日産の業績不振はそれだけによけい目立つ。アメリカ的新自由主義を“絶対神”とあがめるグロ ーバリゼーション。それが相対化されるきっかけができた・・・?