2006年、人々の欲望を刺激した商品たち2006年12月01日 22:49

きょうの『日経MJ』。恒例の「ヒット商品番付」が載った。ざっと見てみてみる。東の横綱「デジタル一眼レフ」と西の横綱「ショッピングセンター(SC)」。大関は「ICキップ」(東)と「軽Car(軽自動車)」(西)。関脇、「メタボリック対策商品」(東)と「脳グッズ(ニンテンドーDS Lite)」(西)。小結は「ウェブ2.0」(東)とフルハイビジョン(西)。以下、前頭上位に、東は、高校野球、プレミアムビール、キッザニア東京、「ジェットストリーム(ボールペン)」、ワンセグ。西は、引退、プレミアムシート、アンチエイジング、「植物性乳酸菌 ラブレ」、新型コンビニ、等等。

こうしてリストアップされた面々から社会が、時代が、読み解けるのだろうか?1つは「モノ復活」(?)。デジタル一眼レフ、軽自動車、フルハイビジョンは確かにその表われと見える。1つは、IT関連。ICきっぷ、ワンセグ、ウェブ2.0、デジタル一眼レフなどがそうだ。もう1つは、身体。メタボリック対策商品、脳グッズ、アンチエイジング、植物性乳酸菌ラブレetc.。そしてさらにもう1つが、購買空間。ショッピングセンターや新型コンビニに表現される。

要するに、モノ、IT、身体、市場。と、すれば、これまで産業構造の変化に基づいていわれてきた"ソフト化”とも違った時代の相ということになるのではあるまいか・・。ひとことで言い表せない分、いささか興味をそそられる・・。

学生による学生のためのジョイントゼミ2006年12月03日 23:03

昨日、三つの大学に所属するゼミが合同でジョイントゼミを開いた。年に2回の試みは 11回目を迎えた。今回の統一テーマは「NHK民営化の是非を問う」。市場か政府か、 の議論のほかに電波という公共の概念とも関わる問題。さらに報道の自由、政治からの「中立」の問題などもからむ。いまどきの学生にはどう取り組んだらよいのかがにわかには見えてこない難問、これが学生たちを襲った。

収穫はあった。NHKの民営化について是か非か、と二者択一な いし二項対立的図式でとらえることの無意味さを参加者が自覚した点。

刺客に ねらわれた離党組の復党問題が騒がれているおり、昨年の「郵政民営化、賛成か、反対か」という単純な想定がはらむナンセンスに「われにかえった」学生が約30名弱?。 学生の学生によるジョイントゼミが機能した、ということなのだろう。

大学4年生(内定者)を“拉致”する日本の企業2006年12月04日 22:28

本日発売の『週刊東洋経済』。慶大の池尾和人がコラム「経済を見る眼」で日本の企業を叱っている。 日本の企業は大学教育をなんと心得ているのか?!と。それは10月2日の月曜日に、多くの企業が 内定式を実施したことに疑問を呈したものだ。大学では、講義があり、ゼミがあるというのを承知 の上で、企業は内定者を強制的に召集した。実にけしからん話ではないか、と。しかも大分前から 日本の大学生は「就職活動を優先して・・4年次の授業を大量に放棄している」のが常態化している のも周知の事実だ。日本の企業はいまだに「地頭」主義にこだわっているのか?。つまり、 採用する人間は「筋がよければ」、「頭がよければ」いいのであり、下手に大学教育の色がつかない 方が好ましい。基本的には、採用してから「自社に都合のいいように鍛え上げる」と言っているのか と。

もちろん、近時の日本の企業は、採用した人材を育成する力を喪失しつつ あることも見逃しえない。先日(10月27日)の朝日新聞は、住友信託銀行が、内定者 の中から何人かを選抜して、4月の入社までに、不動産鑑定士や年金数理人(アクチュアリー)などの 資格を取得するのを支援する制度を導入したことを報じた。支援は、内定選抜者が「予備校」に通って勉強するの を金銭的にサポートすることを指す。

ということは、日本の企業が、大学の教育を “シカト”するという、池尾が指摘したことばかりではなく、内定者を“拉致”した上で、それを 自ら何とかするのではなく、その教育を「予備校」に委ねてしまうというもう1つの問題が加わること を意味する。大学教育にたいする評価が落ちるところまで落ちたということになるが、それは同時に 日本企業も落ちるところまで落ちたこととシンクロしているのである。「評価」する企業の 民度のことを考えれば、大学への「評価」が落ちるのは別に問題ではないが(本来のあるべき大学教育との落差が問われればマジで考えねばならないが)、こうした状況を前に 何の動きも示さない、示し得ない学生しかいないという問題こそ大学にとって実に深刻だと識るべき であろう。大学は何を教育してきたのか、と。

そういえば、一昨日の「合同ゼミ」でも、4年生 が数人、企業に拉致されて参加しなかった・・。

ネットスーパーは現代版「御用聞き」か?2006年12月06日 22:49

今朝の朝日(13版・11頁・経済)。「ネットスーパー拡大中」の記事がのった (Webではこちら)。 スーパーにインターネットで注文すると、野菜や果物をはじめ様々のグッズを1つでも配達してくれるサービスが拡大普及 しているという内容。元祖ネットスーパーは西友。現在の会員9万人。扱う商品は生鮮や冷凍食品から日用品まで約3千点に のぼるという。記事では、イトーヨーカ堂のネットスーパー「アイワイネット」を利用している主婦が紹介されている。 「夕食後のゆっくりできる時間を見計らいパソコン画面を開」いて「特売のちらしを見るように次々と注文」する様子を取り 上げている。西友のあるマネージャーは、今後「働く女性や専業主婦、高齢者の利用が増えていく」と見ているという。

一読する限り、こうした見立てはもっともらしく思われるし、なるほど現代版「御用聞き」という気がしてくる。 しかし、本当にそうだろうか?まず、高齢者は依然としてデジタル・デバイドの典型例だ。パソコンにもケイタイにもよくな じんでいるのはごく一部に過ぎない。そもそも昔の御用聞きは、店(商人)と顧客(上得意)との結構濃密な人間関係を基盤に していた。お互いに相手のことを知っていた。だから気軽に「御用聞き」ができた。成立した。「ネットスーパー」はどうか? どうも、ちらしと電話で注文するのとほとんど違わないのではないかという疑念を覚える。「インターネット」という新しいメディア(一般の利用が可能になってまだ15年弱)の特性・機能とは無縁なところで使われているに過ぎないのではないか。「双方向性」「カスタマイゼーション」「オンデマンド」を活用した試みとは到底思えない。

ゆくゆくは 今とは違ったものになるのだろうか?上得意への御用聞き→大衆(マス)を相手にするスーパーマーケットの誕生→匿名での ショッピングの広がり→ネットスーパーを通した一応顔がわかる買い物へ、これがこれまでの流れ。

だとすれば、ネットスーパーに必要なのは、地元に根ざす店としての存在感だろう。店と客とのコミュニケーションが不可欠でもある。もちろん「地産地消」とか「身土不二 =体と土とは一つである」と か、あるいは「四里四方に病なし」と言ったことを具体化する工夫があれば「ネット時代の御用聞き」と呼べないこともない。とくに「御用聞き」がマニュアル世界とは縁がなければね・・。