『日本紳士録』休刊の意味2007年04月21日 12:18

今朝のNHKラジオ、で交詢社の『日本紳士録』が、今月刊行の版をもって 休刊する、というニュースを聞いた。 すでにWebにも流れている。いわば日本版"Who's Who" が消えるというわけだ。休刊に至った直接的な原因は2005年に全面施行された 「個人情報保護法」。住所、生年月日など個人情報の削除を要求する声が大きく なり、そもそも掲載を拒否する人も増えて、紳士録としての意味がなくなった ということらしい。

明治の国づくりが懸命に行われていた時期(1889年)に 第1版が出版されたというから1世紀以上続いたことになる。アダム・スミスだった だろうか、人間は金銭的利得でのみ満足するわけではなく、名誉とか肩書 などによって自足する側面をもつというようなことを言っていたように思う。 だから実際に「叙勲されることは有難いこと」と思う者が後を絶たなかった。 しかし、いま、欲しいのはあるいはめざすべきは地位とか名誉とか勲章ではなく まさに「金銭的富なのだ」という意識が蔓延し、だから「紳士録になんか載らなく て結構けだらけ・・」となったのだとも考えられる。

いわゆる “スキャンダル政治家保護法”という色彩が濃厚な「個人情報保護法」の 思わざる?効果でもある。同法施行以後、過剰なまでに「個人情報」の保護が 進んでいる。その結果フツーの個人がフツーの他人の情報を知り得ないという ことになっているが、実際にはデータベースとネットワークの高度化によって 個人情報の取得はすさまじいまでに進行しているとみるのが正解だ。ここを 看過しては現在を見誤る。