ベストセラー仕掛け人としての「小さな出版社」2008年05月04日 17:47

今朝の日経に「気を吐く小さな出版社」というコラムが載った。社員数人で“当り”を出す企画力に注目したものである。一読して「なるほど,面白い」と思いつつも,「疲れる話,だな」というのが正直な感想。それほどのもの?と思う本を結局はヒット作にまで押し上げる腕力をもつ,今では誰もがその名を知っている出版社がある。名の知れた出版社で経験を積んだ編集者が,独立・起業したという点で言えば,本日のコラムで紹介されている二社もまったくこれと同様である。

二社とは,ミシマ社とアルテスパブリッシング。前者は,内田樹の『劇場の中国論』でデビューし,最近では,個人のポテンシャルをインターネットによって最大限引き出すことをウリにする企業「エニグモ」を取り上げた『謎の会社,世界を変える。』で話題を呼んでいる。後者は,やはり内田樹による『村上春樹にご用心』を第一作目とし,本社を東京稲城市におく。

両社ともネットでの販売という,最近可能となったビジネス手法に後押しされている。もっともなことだと思う。では,なぜ「疲れる話,だな」と感じたかといえば,ジャンルの垣根を越えて「ベストセラーを出すことにこだわりたい」(ミシマ社社長)というのが基本的スタンスのようだからである。これは「それほどのもの?と思う本を結局はヒット作にまで押し上げる腕力」がビジネスモデルになっていることを意味する。要は,“売れる本”,“ベストセラーを刊行する”のが本作りの《根本理念》ということである。だから話を聞いただけで「疲れる」のである。

「将来何になりたい?」と問われ,「有名人!」と答える最近の子どもたちの屈託のなさと見事に通底しているからである。

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