工業米というミステリー2008年09月09日 22:01

米(コメ)は,人間の食糧となるばかりでなく,飼料用に供せられるというのは常識である。しかし“工業米”なるものがあることを知っている者はそう多くはないのではないか。大阪の「三笠フーズ」という米穀加工販売会社が、工業用限定のコメ(工業米)を食用として転売していたことが明るみに出た。今回の報道を前提とする限り,工業米というのは,水没したり,基準値を超える残留農薬(冷凍餃子でその存在が知れ渡ったメタミドホス)やカビが検出されたため、食糧用としては使えず,工業用としてその使用を限定されたコメを指すようである。いいかえれば,事故米がすなわち工業米ということのようだ。

で,今回のことでよくわからないのは,例えば事故米が,輸入米だったということ。一方で減反政策を採りつつ,ミニマムアクセス米と称してコメを輸入していることが前提としてある。ミニマムアクセスについては,これを輸入義務と見る政府とあくまでも輸入枠の存在を言っているにすぎないとする見解が対立してきた。したがってコメの輸入を義務ととらえる政府に対するプレッシャーが奈辺から発しているのかが,まず問われるが,このことは次のような指摘が重要な意味をもつことを示唆する。すなわち「農水省は三笠フーズの不正を告発するタレコミなどを受け,04年度からの5年間で96回も工場の立ち入り調査を実施したにもかかわらず,転売の事実をまったく見抜けなかった」(日刊ゲンダイ 9/10号 本日発売)という指摘である。要するに立ち入り調査はすべて予告した上で行われ,抜き打ちの形はとらなかった事実が露見したというわけである。

工業米=事故米が,食用米として使われた事例として,まず焼酎が挙げられたが,今日になって日本酒(熊本の酒)にも広がりはじめた。これに煎餅やあられ,米粉を原料とする様々な食品も次々と含まれることになるのだろうか。

もちろん,そもそも工業米そのものの問題もある。工業米は,例えば工業用糊の原料となっているというからである。工業用の糊というのは,牛乳やジュースの紙パックに使用される糊であり,ヨーグルトやゼリー,プリンのふたを貼り付ける糊であり,切手の糊として使われているという。なんのことはない。ヒトの口に入る点では,それほどの違いはないのである。切手を貼るとき思いっきりなめちゃうひとって結構いるんじゃないですか?・・。