パックス・アメリカーナの完全な“終わり”2008年09月16日 22:31

アメリカの大手投資銀行(日本では「証券」の言い方が普通)のリーマン・ブラザーズが破綻した。一部メディアには早速「世界大恐慌」の大文字が躍った。1点だけ指摘しておきたい。ほかならない,アメリカ政府が,リーマン・ブラザーズを見殺しにしたのはなぜ?ということである。財務長官のポールソンが,これだけはという形で公的資金の注入を頑なに拒否した。彼は,投資銀行の最大手ゴールドマン・サックスの出身である。だからライヴァルを蹴落とした,というのではあまりに幼稚に過ぎる。リーマンの破綻は,世界の金融システムそのものの瓦解に直結しうるような性質の大問題だからである。だから,なぜ自己責任原則(市場原理主義)に執着したのか?3月のベアースターンズの時とは違って,そうしたきわめてナイーブなスタンスを選ばせたのは何か,が問われるのである。損失額が実は不明だからという問題を超えた問題ということになる。

アメリカのどの金融機関もサブプライムローン問題に淵源する深刻なマイナスを抱えている。ゴールドマン・サックスしかり,モルガン・スタンレーしかり。次は・・保険のAIGとも。商業銀行にしてアメリカ最大の金融機関のシティ・グループも例外ではない。もちろん,このシティ・グループの破綻は,アメリカ経済の終焉,世界金融恐慌と連動しうる。だから,公的資金の導入という最後の手段は,それまで温存する?

しかし,そうなると公的資金の原資をどうするか,の問題に直面する。税金収入に頼れればまだしも,かかる余裕は一切ない。とすれば国債の増発しかない。だが,アメリカ国債に投資するなどという殊勝なことをよしとする者は果たして今後も存在するだろうか?パックス・アメリカーナの完全な,したがって最終的な“終わり”というほかないのである。“新冷戦”などと構えている余裕はないというべきだろう。しかし,日本のメディアは,この大問題を昨日までほとんどまともに報道してこなかった,というのもとってもミステリアス・・。