ようやく“カティンの森”をみる2010年01月25日 20:26

昨日,午後の所用までの時間を充て,岩波ホールに足を運んだ。
12月の初め,封切られた“カティンの森”の上映期間が一ヶ月を切ったので,いささか無理をした。

“カティンの森の虐殺”を最初に教えてくれたのは故工藤幸雄さんだった
工藤さんが,病をえて,入院されたのが2008312日。
その5日前に,映画“カティンの森”の原作となった
Post mortem: Post mortem-- Opowieść filmowa
(〈映画物語〉Post  mortem またの題〈カティン〉)の全訳を終え,集英社に
訳稿を入れていた。それも「出版の見通しは現在のところ不明」の状態で。
この訳稿が,昨年,集英社文庫『カティンの森』として出版された。
  

同文庫には,工藤さんの遺稿に訂正・加筆・削除を行った
という意味で共訳者である久山宏一氏の「訳者あとがき」がある。
そこに久山氏は「『カティンの森』は,工藤幸雄のために書かれ
たような作品だったと思う。彼は,事件の真相が公然と語られる
ようになった89年前後から,事件に関する論説を次々と発表し
ている」と書いている。

1989年当時,確かにわたしも折にふれ工藤さんから,
スターリニズムによる“この虐殺事件”のことを聞いた。
人間の途方もない業魔について。どこまでも限度のない冷酷非道について。
逆立する国家の蛮力について。
だから,どうしても見ておかなければならない映画であった。
工藤さんが親しかったアンジェイ・ワイダが,すべてをその制作に注ぎ込
んだ映像を実見したかった。

映像は,言葉をはるかに超えてせまってきた。
映像がもつ固有の力で観る者を圧倒した。
ラストシーンには,ことばをのむしかなかった・・。