表現者と観衆のコラボ2010年06月14日 18:17


朝日新聞の朝刊一面に「文化 変調」の記事。
あの「HMV渋谷」が8月で閉店するとのこと。
背景はネット配信によるCD不況というのは想像通り。
音楽文化の変調は,CD不況(楽曲入手の仕組みの変化)
だけでなく,
思い立った時に誰もがいつでも歌い手になれる環境
が普及したことともある。
無料の動画サイトに,投稿するだけなのだからと・・。
それだけではない。
文化の変調は,小説,エッセー,絵画,写真などにも一様に
現れている。
小説だったら,やはり無料で発表可能なサイトがあり,
そこでは投稿者のなかみに対して誰もが種々の要望
(登場人物への思いとかストーリィそのものへの要望)
が出せるのだという。
表現者と鑑賞者とのダイレクトなやり取りを通して
作品が出来上がるということのようである。

そうだとすると,20年ほど前の,筒井康隆が試みた
実験(的)小説が思い出される。
パソコン通信を使った読者参加型フィクション
『朝のガスパール』である。
もちろんパソコン通信だから,パソコン通信の会員で
なければ小説作成に関わることはできなかった。
プロの書き手がモチーフを提供し,アマチュアである
読み手(鑑賞者/観衆)がある範囲で参加するという点では
いま進行中のものとはだいぶ次元が違う。
でもまぁ,試みとしては画期的だった・・。

ところが,20年前が画期的なんて「ばかじゃないの?」
というのが,昨日のNHK(BShi)「ブックレビュー」で紹介して
いた本。西村亨『源氏物語とその作者たち』(文春新書)が,それ。
『源氏物語』は,紫式部が一人で書いたものではなかった,こと
を検証したそうである。実は,紫式部の他に男性の著者もいたし,
紫式部は鑑賞者の要望・助言を取り入れてストーリィを
柔軟に変えていったことを示しているというのである。
なんのことはない。
千年も前に,読者参加型メタフィクションはあったのである。
千年かけて戻ったのがネット社会ということらしいのである。




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