背伸び、の効用2010年12月29日 22:24

日経の「ミニシアター閉館ラッシュ」という
記事が目にとまった。
表現の固有性を特徴とする映画をみせる場
が消滅しつつあるというのである。
この3年で渋谷のミニシアターから
8スクリーンが消え、さらに
間もなく恵比寿ガーデンシネマが閉じ、
来年にはシネセゾン渋谷も閉館するという。

記事は、背景として
大型シネコンの出現があると分析する。
いまや同一空間の多様な選択肢から
選んで見るのがスタイルなのであり、
1館1映画の時代ではなくなった、のだと。

ま、それはそうかもしれない。
でもより根源的には、
同時に紹介されている
キネマ旬報映画総合研究所の掛尾良夫の
「観客としての若者の変質」という指摘
に注目すべきであろう。

「変質」というのは、
かつての若者は
「難解な映像作家や知らない国の映画を
背伸びして見る」
ことをかっこいいととらえたが、
現在は「分かりやすく親しみやすい邦画を
見に、大きな劇場に向かう」という対比
としてとらえられる。

そうなのである。
かつては、
背伸びすることに憧憬し、
簡単明瞭に魅かれることを拒否しつつ、
ヨリ難しいことをよしとしたのである。
あがくこともまたたのしだったのである。

映画だけでなかった。
文学しかり、音楽しかり、美術しかり、
哲学しかり、いわゆるサブカルだって・・。

フェリーニの8 1/2 に一撃されたあの記憶。
自分がふっとばされたあの衝撃があればこそ。

すべてがそのまま理解可能で、心地よい、
ということが人を育てることにつながる
というのはどうしても胡散臭さを免れないのである。


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