ネット通販の「勝組」楽天と「イーグルス」2008年11月23日 21:53

昨日の日経の「東北経済」面に「楽天球団,試金石の5季目」が載った。イーグルスは,今シーズンも指定席から脱出できないまま終わったが,五季目を迎える来年が正念場になるという趣旨の記事。至って論調はまじめである。来季「クライマックスシリーズに進むためには,シーズンを通して安定的な力を整える必要がある」が,そのためには「抑え投手や長打力のある打者,さらには選手やファンの精神的支柱となるキープレーヤーの補強を進める」必要があるという球団の方針をそのまま論評抜きで紹介している。

プロ野球が,国民的人気を誇ったスポーツというのは今は昔。例えば日本シリーズ。かつてであれば多くのファンが期待して,沸きに沸くGL決戦としてTV視聴率も40%は下らなかっただろう。が,今回は,優勝がかかった第7戦はともかく,4戦目まではいずれも20%にさえ達しなかった。直接的には1993年のJリーグ発足以後,プロ野球が,したがって野球自体も,子ども達のまっすぐな関心をよぶ対象ではなくなってきたが,その傾向は一貫して続いている。ファン層が中高年中心という特徴が,ヨリ鮮明になってきていると言えそうなのである。IT企業の楽天は,落ち目とはいえファンが全国的に広がるプロ野球の宣伝力を恃んで,球団経営に乗り出したというのが真実ではないか。プロ野球が,全国的には,沈没傾向にあるなかで,これまで空白地帯であった東北―仙台にフランチャイズをおくことのインパクトを買った,といえばよいだろうか。だから,ユーザーが比較的若年層という「楽天市場」のかたよりが,プロ野球によって修正できれば,その時点であっさりと撤退することも念頭にあったといってもあながち的外れとはいえないだろう。

しかし,マスメディアもふくめ,まわりは結構まじめなのである。だから楽天としては,しばらくはズルズルとこの過去の遺物をひきずっていかざるをえなくなっているのかもしれない。そこで,関心を呼ぶのが,例えば,さまざまなタイトルを獲得し,沢村賞を受賞した上にパ・リーグ最優秀選手(MVP)に選出された岩隈の年俸の行方ということになる。今季の1億1千万からどれだけアップするのか。楽天の三木谷は,つい先日,ネット通販が景気の影響を受けないことが証明できたと胸を張った。折からの金融危機にともなう証券事業の落ち込みを「通販」がカヴァして,連結営業利益が二倍(対前年同期比)に伸びたことが,その背景にある。時間をかけ,ガソリン代なども含めてかなりの交通費を覚悟しつつ,ショッピングに行くよりも,購入金額総額を送料無料になるように工夫すれば,家にひきこもっている方がかなり割安な消費生活を送れるという現実が,それを実現した。街の商店街に活気が消え,Web通販「楽天」だけは繁盛する。岩隈の年俸を大幅に引き上げ,中村紀洋をゲットしつつ,配下のプレーヤーに大盤振る舞いをする。はたして三木谷は,こうしたことを念頭において胸を張ったのだろうか?

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