新型インフルエンザという災禍とグローバル企業2009年05月20日 14:21

昨日,NHKラジオ(「ビジネス展望」)で,
経済産業研究所の山下一仁が,新型インフルエンザについて,
その防止策を「農政と経済」の視点から話していた。
要は,民事的損害賠償が,
最近では,企業に過失がなくとも
損害賠償責任が発生していること(無過失責任)から,
これにアナロジーしつつ,
新型インフルエンザのような病気を発生させた政府に
責任の一端を負わせるようにすれば,
現実的な抑止策・予防策につながるはず,
という主張であった。

すでに国連の国際法委員会では,
原子力開発,宇宙開発など
国際法的には合法であっても,
人間の健康,生命,環境に危険性が及び,
実際に損害をもたらした場合には,
事業者と国家に
事後的な無過失責任を負わせるという
原則案が,採択されているので(2006年),
これをいわばグレードアップすれば良いというのである。

これだけ聴けば,
例えば過失がないものの結果的に不良品を販売したというようなケースと
ウィルスが原因となる新型インフルエンザ(のようなもの)とを
同次元に並べる“乱暴”に,
はてな?と思うだろう。
しかし,山下は,
新型インフルエンザのような現象は,
科学技術の発達や
グローバル化・貿易の広がりと
密接に関連していると指摘しながらも,
それ以上のことを言わないので,
事の本質が見えないだけである。

いま発売中の『週刊 金曜日』では
「特集 豚インフルエンザ・パニック」を組んでいる。
その中に,松平尚也「多国籍企業が牛耳るメキシコ養豚の実態」がある。
「メキシコから輸出される豚肉の実に9割が『日本向け』」
というのにいささかのショックを覚えるが,
豚肉の“製造”構造の方が
ヨリ衝撃的な話である。
要するに「効率化を追求する大規模な工業的畜産」が,
その実態だというからである。
欧米でスタートした
「工業的畜産は畜産貿易の拡大,
グローバル化の流れに乗って全世界に広がる勢い」にある。
限られた空間に,可能な限り多数の豚(家畜)を入れる“飼育工場”
というわけである。
その際,
多国籍企業(スミスフィールド・フーズの実名あり)は,
養豚業で一番コストがかかる糞尿処理費を浮かすために
「豚の糞尿を垂れ流し,悪臭を放つ巨大な肥溜池を作った」という。
きわめて高い“家畜密度”。
そこでは,一匹(頭)の家畜が病気に感染すると,
同じ“工場”にいるすべての家畜に
一瞬のうちにウィルスが
広がるリスクが常に存在している。
当然,ウィルス交雑の温床にもなる。

ということは,
新型ウィルスは自然現象というよりも,
人為的・人工的な現象にほかならないということである。
すぐれて経済社会の問題なのである。
山下の提案は,
経済的視点(コスト意識)に訴えるという点で,
実は相対化されるべき側面を含むとはいえ,
現代経済社会が直面している難問の一つが,
多国籍企業(グローバル企業)の制御であることを示している,
という点で一考されてよいのではないか。