「過重労働」というワナ2006年07月18日 21:16

『エコノミスト』(毎日新聞社)今週号(7/25号)の特集は「Karoshi」。要するに「過労死」。「Karoshi」は、2002年にOED(Oxford English Dictionaryオンライン版)にも加えられたという。かつては日本固有のものと見られていた「Karoshi」が、いまではアメリカ、中国、韓国などにもみられる現象になったのは周知のこと。

同特集は、日本における1990年代後半以降の橋本から小泉「構造改革」にかけて推進された「労働市場の規制緩和」が、最近の「日本経済復活」につながったとする見方があるものの、むしろ「低所得の非正規労働者を増やすと同時に、リストラによって減らされた正社員の労働強化」が深刻な問題と指摘する。

なかで注目されるのが、その具体的事例としてトヨタの現状を俎上にのせていることだ。連結純利益が1兆円を超え、生産台数ではGMを抜いて世界一となるのは時間の問題といわれるトヨタ。そのトヨタで、リコール台数が急増しているという。先日(7月12日)、トヨタのリコール隠し(RV車の欠陥を認識しながらリコールを届けなかったとして、歴代の品質部長3人が業務上過失傷害容疑で書類送検された件)が発覚したばかりだが、実はリコールそのものが著しく増えているというのだ。愛知労働問題研究所の伊藤欽次によれば、「生産台数の急増 と過重労働が影響している」。トヨタ単体の生産台数をみると、1991年度の315万台から2005年度の386万台へと22.5%増大したのに対して、従業員は75,266人が65,798人へと12.6%減少した。もちろんこれだけみれば一人当たりの生産台数が増えて、生産性の上昇があったことになるが、その内実は「過重労働」にほかならなかった。しかも、トヨタ本体の生産部門要員のほぼ4割は非正規労働者だともいう。近時、コンプライアンス(法令遵守)とか企業倫理とかをことさらに強調せざるを得ないわけがここに(も)あった、ということだ。なにしろ品質保証を請け合う環境が消えかかっているわけだから・・。