「民主主義は民族文化の破壊者か」(大嶽秀夫)を読んで ― 2006年08月10日 11:15
昨日の読売新聞に政治学の大嶽秀夫が先月福岡で開催された「世界政治学会」の紹介を兼ねた記事を寄せた。学会のメーンテーマは「民主主義は機能しているか」。「世界中で民主主義が危機に瀕しているという共通認識」があったから設定されたとある。「民主主義はどの文明でも根付くのか」「外からの努力で民主主義を根付かせることが可能なのか」など、政治学の専門家ではなくとも興味を呼ぶ問題が議論されたようだ。
大嶽が、とくに印象に残ったとして紹介している「オランダにおけるイスラム系移民をめぐる情況を実地調査した若い女性学者の報告」は確かに考えさせる内容をもつ。民主主義国の手本と観念される西欧諸国は、ほぼ共通して「移民とその子孫(「少数民族」)の貧困、犯罪、そして彼らに対する(しばしば暴力的な)人種差別行動に悩まされている。それを温床にして極右勢力が台頭して、ポピュリズムの形で代議制民主主義を脅かしている。そしてその反動として、少数民族の側は西欧リベラリズムの価値に疑問を呈し、出身国の習慣や宗教の中にアイデンティティを模索し始めている。・・イスラム系民族がそれをもっとも先鋭的に展開」する、というのがその概要。「イラク人の人権を守るためにリベラル・デモクラシーを武力を使ってもイラクに『押しつけ』ようとする米国」への激しい反発もこうした情況と重なるのだと。〈人権〉とともに〈民主主義〉も歴史的・文化的な文脈抜きにはその意味をとらえ得ないことを示しているということだ。
加えて、問題はそもそも「民主主義国の手本と観念される西欧諸国」において「少数民族」に対する暴力的でもある「人種差別行動」が、なぜ生じるのかを問うことにこそあるのではないか。大嶽はその点にまったくふれていない。
大嶽が、とくに印象に残ったとして紹介している「オランダにおけるイスラム系移民をめぐる情況を実地調査した若い女性学者の報告」は確かに考えさせる内容をもつ。民主主義国の手本と観念される西欧諸国は、ほぼ共通して「移民とその子孫(「少数民族」)の貧困、犯罪、そして彼らに対する(しばしば暴力的な)人種差別行動に悩まされている。それを温床にして極右勢力が台頭して、ポピュリズムの形で代議制民主主義を脅かしている。そしてその反動として、少数民族の側は西欧リベラリズムの価値に疑問を呈し、出身国の習慣や宗教の中にアイデンティティを模索し始めている。・・イスラム系民族がそれをもっとも先鋭的に展開」する、というのがその概要。「イラク人の人権を守るためにリベラル・デモクラシーを武力を使ってもイラクに『押しつけ』ようとする米国」への激しい反発もこうした情況と重なるのだと。〈人権〉とともに〈民主主義〉も歴史的・文化的な文脈抜きにはその意味をとらえ得ないことを示しているということだ。
加えて、問題はそもそも「民主主義国の手本と観念される西欧諸国」において「少数民族」に対する暴力的でもある「人種差別行動」が、なぜ生じるのかを問うことにこそあるのではないか。大嶽はその点にまったくふれていない。
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