「伊達直人」現象2011年01月13日 21:38

伊達直人現象が話題をさらっている。
匿名の善意とか,
匿名の寄付といったタームが躍っている。

クリスマス(12月25日)の日,
前橋市の児童相談所に
伊達直人という名で
ランドセル10個が届いた。
これが発端だった。

それが昨日からきょうにかけて,
「社会現象」として各紙が一斉に,
取り上げるまでになっている。

各紙の「分析」のなかで,
最も印象に残ったのが,
毎日新聞が紹介している
「流行の現象に便乗して現代を
生きている充実感を味わいたい
という心情」(森真一・現代社会論)
という指摘だった。

つまり,
今回の現象を「慈善」,「利他心」などの
発露としてとらえ,
「一過性にするな」とか
「寄付文化の定着を」といった
願望が語られているが,
実は,
そうしたコンテクストにつながるような
現象ではないと見るのが正解なのである。

21世紀になって,
この国でますます際立ってきた
ワンフレーズで言い切る
「小さな物語」に大勢で群がり,
これをしゃぶりだけしゃぶって
あっという間に消尽してしまう,
お馴染みのあの「現象」にほかならない。

これを媒介するのはもちろん「メディア」。
しかも,映像メディア。
すなわちTVと動画サイト。

全国紙(読売,朝日,毎日,日経)
のデータベースにあたってみると,
12月25日の前橋の事例を取り上げているのは
読売だけ。
しかも12月28日のたった1件である。
これを例外として,
記事の形であらわれるのは,
1月6日以降に過ぎない。
この日を境に関連記事が急増している。

ということは,
メディアが「伊達直人現象」を煽り立て,
これに便乗して,
多くの人が「現代を生きている充実感」
を覚えるべく
「現象の輪」に跳び込んでいるとしても,
活字メディアよってでは決してない。

やはり,映像の力である。

でも,刺激がそれだけ強い分,
覚めるスピードもすさまじいと予測できる。

見ててごらん,
概ね立春過ぎたら,
次の話題が飛び出すから,ね。




ことばのあや2010年11月28日 19:56

先日,学生と話をしていて,
何かの流れで,
「それは,ことばのあやというものだよ」
と言ったら,通じなかった。
試しに,
言外の意味,含み,含蓄などを質してみたら
「れ,れ,れ」の連続だった。
まして,
「諷意=ふうい」などは・・。

先日,法務大臣が辞任した。
支持者の集まりで失言したのが,
その理由だった。

失言というのは,周知のように
「国会答弁は二つのフレーズだけ覚えておけば済む」
というもの。
つまり,
「分からなかったら,
『個別の事案については答を差し控える』か
『法と証拠に基づいて適切にやっている』と
言えば万事OK」と言った,というのである。
これが国会を軽視し,侮蔑するということで
糾弾され,結局辞任となった。

本人は「ジョーク」で言ったのだろう。
支持者,つまり内輪の集まりで,
ウケを狙って言ったのだろう。
「二つのフレーズ」というのは,
新しく法務大臣が就任すると,
官僚がマニュアルよろしく?教示する
「魔法のふた言」とも言われているようだから
ひょっとするとアイロニーだったのかもしれない・・。

むろん,国会答弁で,この「魔法のふた言」
しか発言しなかったわけではない。
しかしながら,
民の声は
「二つのフレーズしかもたない無能法相なんかヤメロ」
の合唱となった。
実際に,大臣としての技量・才覚が
欠けていたかもしれないが,
この合唱は,どうにもシャレにもならないのである。

法相がふっとんだ
と同時に
ことばのあや,もふっとんだのである。





プロ気取りの瀰漫2010年10月14日 21:43

ある医師が,ラジオで,
ネット関連の困った問題を話していた。
最近,ネットであれこれ「調べてから」
診察に来る患者が増えているというのである。
自分の症状が,どの「病」に当たるのか,
「決めた上で」現れるのだという。

病名,治療法,その治療で名の知られた医師名
などを諳んじて来るというのである。
これがなかなか厄介で,
プロの医師を困惑させるらしい。
当然,彼ら/彼女たちは,
ネット情報を正確に理解できているわけではない。

そこで次のように対応することにしたらしい。
「あなたが○○だと診断した根拠は?」と訊き,
それへの「自信に満ちた」回答に対しては,
何らそれを裏づけるものはないことを伝え,
医学生が現に使っている教科書(医学書)の
該当箇所を示す,ということにしたのだそうだ。
それで,ようやく
彼ら/彼女たちは,目の前にいるのが
プロの医師であること,自分の「診断」が
的確ではないことを悟るのだそうだ。

実にリアリティのある話である。
ネット情報を鵜呑みにし,
半可通な知識をふりまわす例は
ゴロゴロ溢れているからである。

しかし,それは同時に
fake professional(偽プロ)の瀰漫と
セットなのだと知る。
そしていま,偽プロの瀰漫が,
ネットの普及ともリンクしている。

The Shallows:What the Internet Is Doing to
Our Brains(by N.G.Carr)が,このあたりのことを
剔抉している。良書である。
が,翻訳は『ネット・バカ』。
ひたすら営業だけを優先したのだろう。
ちょっと惜しいし,残念である。
読者を『バカ』にした感は否めない。
ここでも,プロの編集者はいなかった?のか・・。




「事前投票」2010年07月06日 16:03

参議院選挙の「事前投票」をしてきた。
いわゆる「期日前投票制度」。
もちろん、いまも「不在者投票制度」もあるのは知っている。
しかし、そんなことはどうでもいい問題である。
問題は「事前投票」して、会場から出ようとしたら
その場に多数いた掛員から、さわやか~に、
「おつかれさまぁ~」と声をかけられたことである。
実に不思議な感じがした。
「投票権を行使しただけ」で「おつかれさまぁ~」。
選挙権をなんだと思っているのか、と
つい、独り言ちた。

でも、10年ほど前に、ゼミの女子学生が、
「選挙権なんていりませ~ん」
「どうせ投票になんか行きませんから」
と言っていたのをまた思い出した。
時々記憶の棚から飛び出してくるのである。
「選挙権、投票権は不要」と明るく言い放つ者がいるから、
「おつかれさまぁ~」がさまになるのだと知る、

それにしてもGoogleの「選挙への本気度」は、
いったいどう解読されるべきか?