大学は入試,入試でフル回転2008年11月17日 19:54

大学の入学試験といえば,昔は,2月(私立)と3月(国公立)に集中していた。しかも受験機会は,どの大学でも同じ学部・学科は1回限定だった。それが今では夏休み以降,頻繁(これを数日前からハンザツとよむことになったらしい・・(笑))に行われる。入試関係の委員がまわってきたら,他のことが一切できなくなって,鬱々たる日常を過ごさなければならなくなるが,入試関係の委員でなくとも,秋の深まったこの時期に,一斉に動員される日がある。2月に実施される一般入試以外の,9月以降間断なく行われてきた推薦入試(学業,スポーツ)・AO入試などの二次試験の日がそれである。今年もつい先日あった。午前には,1千字程度の文章の趣旨を100字ほどにまとめ,かつ筆者の主張に対する自分の考えを800字程度で表現するという課題。午後は,一人5分~10分程度の面接。今年は,この面接の役がまわってきた。20人弱の受験生と対面した。

自己紹介のようなことを記入する用紙が予め提出されている。これを見ながらのインタビュー。大学卒業後のことを書く欄がある。「将来どんなことをやってみたいか」。これに対する受験生の反応がいつも不思議なのであるが,今年もそうだった。「不思議」なのは,ほとんどの受験生が申し合わせたように同じようなことを書いてくるからである。数年前までは,大学を出たら「中学校の社会科の先生になって,スポーツ関係の部活の顧問につきたい」だった。異口同音に語られる「中学校の社会科の先生プラス運動部の顧問」は,結構不気味でさえある。そして,今年。8~9割の受験生が「金融関係の仕事に就きたい。ファイナンシャル・プランナーになって多くの人の生活を豊かにし,地域経済の活性化につとめたい」というのであった。金融帝国アメリカの失墜,金融シフトモデルの崩壊,といった現実にはいささかの問題関心もなくそうであった。ちなみに,最近の社会的出来事で興味をもったのは?と聞けば,これも例外なく「定額給付金」を挙げた。実に明るく,屈託なく金融を崇める高校生たちなのである。

聞くところによると,最近は高校3年生の文理の比率が,文型優勢に転じたという。昔は工学部人気が圧倒的な時代もあったが,それが様変わりし,工学部は学生集めに苦労しているといわれる。“ものづくり”のロマンよりも,金融でサクッと儲ける虚構にリアリティを覚えるというわけである。「金融」モデルのイデオロギーのまことに強靭なことよ,と思わざるを得ない。もちろん,現実はすでに次の場面へと転じている・・。