井上陽水のライブ2009年05月28日 22:02

井上陽水のライブコンサート(40th Special Thanks Tour)を聴いてきた。
予約受付は1月だったが,
どうせSold Outではじかれるだろうと思いつつ
トライしたら,入手できてしまったのである。
ほぼ4ヶ月経ち,その日が近づいた。
やるべきことが山積みという事態を前にいささか慌てたが,
どうにか時間を捻出した。

ライブは,期待を裏切らなかった。
しかし,間然するところなし,
というわけでもなかった。
それは端的に言えば曲目の構成の問題。
8,9割方がこれまでの曲なのである。
現にある陽水,
これからある陽水,を表出する曲は,
Love Rainbowなどごくわずか。
最もインパクトを感じたのは「断絶」だった,
といえばおわかりであろう。

彼は芸名アンドレ・カンドレの時代をもつ。
その時はちっとも売れなかった。
「断絶」は,それを総括しつつ,
リスタートを試みた時の,
テンポとおもいきりのよさが持ち味の傑作である。

しかし,この「断絶」から40年。
いまのテンポとおもいきりのよさを表現する新譜を
うたってくれたっていいじゃないか,
というのが偽らざる心境であった。

聴衆は圧倒的に中年以上。
だから,
それぞれの内に聳立する陽水のイメージをなぞり,
裏づけてくれる,
ある範囲を逸脱しない曲を求めるのかもしれない。
陽水は,もちろん,
そのあたりのことを熟知している。
さればあまり冒険をしなかったということなのだろう。

強く印象に残った彼のトーク。
「わたしの作った曲の9割は,いい反応がもらえず,めぐまれなかった曲」。
つまり,全作曲の1割だけが,
消費対象となり,口ずさまれているに過ぎない,
というのである。
「自分ではすごく気に入っているのに,受けない曲が少なくない」
というのである。
同時代の多くの人に受け入れられることの難しさ。

コンサート中,popularとpopulismなるタームが
繰り返し,繰り返し
頭の中をとびまわった,ことだった・・。