底が知れている日本のメセナ2006年10月15日 19:31

今朝の日経29ページの「ファミリー経済」。このところ全国的に音楽コンクールが増えている事情を 追っている。音楽教室業界、演奏会や各種イベントのサポート業界などが、宣伝効果や“ハク づけ”をねらって実施するから、というのがその分析。そして、注目すべきなのが、「メセナ」の後押 しも目立ってきているという指摘だ。メセナ(企業による文化芸術支援)は、日本ではバブルととも に沸き起こり、バブル崩壊とともにあっという間にすたれた。それが、企業業績の 回復に連動する形で復活し始めているという。景気回復に加えて、いわゆる企業の社会的責任(CSR)重視がこれを促しているともある。恐らく株主価値重視の一環の動きということなのだろう(それほど日本の株主の民度は高くない?)。

それはともあれ、なぜ「音楽(コンクール)」なのか?という疑問は生じる。というのは、昨日の日経には、日本の主要公立美術館が危機的状況に直面しているとあったばかりだからだ。その背景にあるのは、地方財政の破綻にともなう各地方自治体による予算削減。人件費、光熱費がかさむがゆえの開館日数の圧縮。作品収集・保存活動の中断。作品の劣化に対してもただ手を拱く状態・・。多くの美術館は、ボランティアでどうにか運営を形だけは維持し、寄託品でその場しのぎをくりかえす。

入館者を増やす努力はしている のか、と直ちに叱正の声が飛んできそうだが、もともと美術館の運営については、年間総収入に占める入場料は一ケタというのが標準だし、ジョーシキだ。日経のこの記事でも紹介されているが、例えばニュー ヨーク近代美術館(MoMA)やメトロポリタン美術館といった世界中から入館者を引き寄せる著名なミュージアムで さえ、年間総収入に占める入場料の割合は14%と16%に過ぎない。まさに、まっとうな文化・芸術はコスト意識をはるかに超えた次元でのみ 成立するのである。

各美術館は、大手企業をはじめ企業への働きかけは懸命に行なっているという。要するに、企業次元でも、音楽には反応し、美術には無反応というのがこの「美しい国」の現在ということのようだ。効率最優先という経済思想には、音楽という時間の芸術がヨリよく寄り添う のかもしれない・・。