“桜桃忌”と奥野健男 ― 2008年06月19日 10:39
きょうは桜桃忌。太宰治の墓前は多くの人で賑わう。太宰が没して60年。昨日,『天声人語』がこの話題を取り上げた。「人気漫画家が表紙を手がけた『人間失格』(集英社文庫)は1年で21万部売れた」と紹介した上で,「4回の自殺未遂と薬物中毒。この『弱さ』をどう見るかで、太宰像は変わる」と指摘する。両極の太宰像,その例として挙げるのが,否定的だった三島由紀夫と肯定的にみた奥野健男。奥野は,太宰について「感じやすく,傷つきやすい,けれど真実を鋭く感じとれる裸の皮膚を,恥部を守り通した」と庇った,と。
太宰論で文壇に登場した奥野健男は,前の勤務先で16年間同僚だった。太宰弁護の言をなぞっていえば,奥野は人一倍「感じやすく,傷つき」やすかったが,「真実を鋭く感じとれる裸の皮膚を」守り通すナイーヴさ,“初々しさ”をひとに見せてはならぬ,覚られてはならぬを貫いた人という印象だった。それは,いわゆる“清濁併せ呑む”という人の知恵を借用することに表れていたように思う。入試の小論文の採点では,いつもきまって横にはウィスキーが置かれていたが,これはほんの一例であった。
奥野健男は,6月19日が近づくと,必ず“桜桃忌”のことを話題にし,6月20日には「昨日,三鷹下連雀の禅林寺に行ってきた」ことを話すのを常としていた。「年々,墓前に足を運ぶ人が少なくなってきた」と嘆じていたのはいつのことだったか。今は昔・・。
太宰論で文壇に登場した奥野健男は,前の勤務先で16年間同僚だった。太宰弁護の言をなぞっていえば,奥野は人一倍「感じやすく,傷つき」やすかったが,「真実を鋭く感じとれる裸の皮膚を」守り通すナイーヴさ,“初々しさ”をひとに見せてはならぬ,覚られてはならぬを貫いた人という印象だった。それは,いわゆる“清濁併せ呑む”という人の知恵を借用することに表れていたように思う。入試の小論文の採点では,いつもきまって横にはウィスキーが置かれていたが,これはほんの一例であった。
奥野健男は,6月19日が近づくと,必ず“桜桃忌”のことを話題にし,6月20日には「昨日,三鷹下連雀の禅林寺に行ってきた」ことを話すのを常としていた。「年々,墓前に足を運ぶ人が少なくなってきた」と嘆じていたのはいつのことだったか。今は昔・・。
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