グーグルの「無償パソコンOS」の意味2009年07月09日 22:13

Googleが,ついにパソコン用OSに乗り出すという
Web上での動作に(のみ)こだわったOSとして,
基本の設計から組み立てたとある。
早くて軽く,数秒で起動し,
攻撃されるような欠陥をもたないという。
いいかえればウィルスに悩まされることから
解放されると胸を張っている。
本当だろうか?

ともあれ,コードはオープンソースとして
(=無償で)提供するというから,
OSの圧倒的シェアをもつ
マイクロソフト「帝国」打倒の
契機となるかもしれない。

しかし,考えてみれば
Googleは「検索連動型広告」に
そのビジネス根拠をもちつつ,
急成長をとげた企業だ。
ヴァーチャル世界において,
ひときわ存在感を発揮してきた。
それが,マイクロソフトの守備範囲と
ほぼ重なるようなビジネス戦略を
展開し始めたのである。
ネット検索に加えて,
ブラウザ(IEへの対抗としてのChrom)や
業務用ソフト(Officeへの対抗としてのDocs),
およびドコモが明日発売予定の
携帯グーグル(マイクロソフトはウィンドウズ・モバイル)にまで及ぶ。
と,いうことは,
まるでヴァーチャル世界に生きる愉悦を
感受する余裕がなくなったかのようでさえある。
いいかえれば,
マイクロソフトと同じ土俵にのる方向へと
転進せざるをえなかったかのように思われるのである。

マイクロソフトの方は,OSを含めて
有償での提供を基本とするビジネス・モデルであるのに対して,
Googleは無償提供を謳う,
という差別化はもちろん施されてはいる。
ネットが,容易かつ安価に
利用できる環境を整備すれば,
Googleの本来の業務である
「検索連動型広告」の基盤が
強化できると確信してのことであろう。

しかし,ユーザーからすれば,コストを直接負担するのか(マイクロソフト型),
あるいは,広告費の分が嵩上げされた商品を
広く購入するという意味で
間接に負担するのか(Google型)の
違いであり(違いに過ぎず),
いずれも営利追求型のビジネスであることにかわりはない。

と,いうことは,
結局はウィルスに悩まされなくなる(=欠陥を攻撃されない)
とはいえなということであろう。
いまでは死語となった感のあるハッカーなるネット技術に長けた者は,
市場原理の貫徹・利潤動機の追求ということに
容赦なく厳しき者の謂に
ほかならないからである。

マイクロソフトの終わりを
仕掛けたGoogleが,
当のマイクロソフトと同じ轍を踏まない
保障はどこにもない。
マイクロソフトと同じ土俵にあがる選択は,
Googleにとってまことに“躓きの石”なのである,
とはいえないだろうか。