宇井純氏が逝去された ― 2006年11月12日 22:55
宇井純が亡くなった。日本の高度経済成長が、産業としては重化学工業を軸に追求されたがゆえに、公害と表裏の関係のもとで現実となったことを鋭く告発した「行動する学者」だった。1970年に始めた「自主講座」を15年にわたり継続し、現代の経済社会が抱えた「宿痾」が、「公害問題」から「環境問題」へと質を変えたことを読み解き、それへの対処を具体的に示してみせた。「理論と実践の分離」などと主張する事にも鷹揚な姿勢を見せていたように思われるが、それだけ懐が深かったということなのだろう。自主講座の講義録『公害原論』(亜紀書房)は、歴史を超えて読まれることになるのではないか。実践活動の深さ・強靭さによって万年助手という“名誉”を手にしたが、本当の学者であることは誰もが知っていた。宇井純のような学者が本当に少なくなった。いなくなった。目の前の成果、業績だけに汲々とするものばかりになってしまった・・。持続的に「行動する」ことに人びとの視線が集まらなくなった。
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