ワーキングプア Ⅱ2006年12月10日 23:46

7月23日にNHKが取り上げて大きな反響を呼んだ「ワーキングプア」。(当日このブログでも紹介した)。その続編が先ほど放映された。「いざなぎ景気」を超えて戦後最長の景気といわれる日本経済。大企業は業績の好調を誇示し、ボーナスが過去最高となったと伝えられるなか、働いても働いても生活保護水準以下の収入しか得られない人たち。今回の焦点は、女性と高齢者。

働く女性の半数が非正規雇用といわれる。そのなかで増え続ける「ワーキングプア」の女性たち。働く意欲があり、能力もあるのにパートであるがゆえに生活費を得るのがなかなか困難である厳しい現実が、日本は正常なのかと問いかける。子どもをかかえ、あるいは病の親をかかえた深刻な例が続いた。

自助努力者を支援するという「新自由主義的」政策が、児童扶養手当を半減することを決めた。パートをもうひとつ増やさなければならない状況が生まれた。

最近話題となりつつある、海外研修生という名のチープワーカー。例えば、技術研修という名目で中国からやってきた人々が時給600円以下で働く。彼らの一部は時給200円という例もあるという。それだけ国内の賃金に引き下げ圧力がかかる。かつて活況を呈していた岐阜の繊維業者に打撃を与えているのがこのような現実というナレーション。単に海外(企業)との競争ばかりではない状況が問題の難しさを増幅する。

高齢者のワーキングプアも深刻だ。現在、年金が支給されない人々は40万人以上だとか。働き続けなければ暮らしていけない高齢者。大工さんだったという80歳の男性は、現役時代には、親、きょうだいを養うために年金の保険料を納めなかった期間があり、結局受給資格を得るまで5年不足して、現在は空き缶を集めて暮らしをたもつ。しかしその収入は夫婦働きづめで月にわずかに5万円。何かの時にと蓄えている70万円のせいで生活保護も受けられないという。

いまの政府は「再チャレンジを支援する」を前面に出している。しかし、チャレンジといういかにも安手のキャッチコピーまがいのことから突き放されたのが「ワーキングプア」にほかならない。番組を担当したキャスターの最後のコメント。「病気、親の介護、老いなどをきっかけに誰もがワーキングプアになるというのが現在だ」と。

まじめに働けば安心して老後が暮らせる、というごく当たり前のことが当たり前でなくなりつつある現実。市場メカニズムの作用(競争原理)を増強し、加速させるだけの政府を制御することができるかどうか。この遊戯は80年代にポストモダンを気取ったスキゾキッズ風に立ち向かっても到底無理だろう・・。