「流行語大賞」と「ヒット商品番付」2009年12月02日 22:00

流行語大賞が決まった。
年間大賞は「政権交代」
4年前の大賞が,
「小泉劇場」だったから,
誰もが想像していた通りである。
サプライズなし。
大賞決定直前に話題になったばかりの
「事業仕分け」が,
トップスリーに入った。
それだけインパクトがあったのか,
他には特に目立ったものがなかったからなのか。
とまれ,ムダ撲滅の“美名”のもと,
「ビジネスの理」が,
モンスターにならぬよう願いたいものである。

『日経MJ』も恒例の
「2009年ヒット商品番付」
を載せている。
東の横綱が「エコカー」。
西は「激安ジーンズ」。

以下,「フリー」(ノンアルコールビール),
「LED」(発光ダイオード),
「規格外野菜」,
「餃子の王将」,
「下取り」,
「ツイッター」(超短文ブログ?)と続く。

いずれも流行語大賞と同様,
「脱ダム」ならぬ「脱ムダ志向」,
「縮み志向」といえばよいか。
経済不況を,
ただ反映しただけで,
ひねりも工夫も一切なし。
マンネリがきいてあきれる,
きょうこのごろ。

大学の「危機」は「事業仕分け」だけ?2009年12月10日 22:06

「事業仕分け」の「結論」に対して,
異議申し立てが相次ぐ。
「異議アリ!」,「ナンセンス!」
と声をあげるのは,当然のことである。
なにせ「目の前のこと」だけを尺度に
ばっさり斬り捨てるのが
ウリなのだから。
大学ぎょーかいの「声」は,
「事業仕分け」の作業が行われつつあった
その時から,
国立と私立の枠を越えての「警戒感」「危機意識」の表明
という形でまず発せられた。

そして今週。
各地域の国立大学(正式には国立大学法人)が
手を携えて,
「予算確保」に向けた声明を
出すまでになった。
そんな中,
要求の一つに,
予算の削減などといわず
「研究者の自由な発想を尊重した投資の強化を」
などというのがあって,
おもわず,苦笑した。
「投資」なるタームが,
メタファーではなく,
ことばの本来の意味で
使われているからである。
あくまで「資本の投下」対象としての
「研究」なのである。
何のことはない。
「異議申し立てする」側も,
「ビジネスの論理」にどっぷりとつかっている。

ヨリ一層深刻なのは,
予算の削減という
きわめてわかりやすい仕儀に対しては
鋭敏に反応するのに,
近時,教育(大学教育)界を
すっぽりと覆っている
「ある種の動き」には
まったく鈍いということである。
鈍いというよりも,
みずから進んで受け入れている「動き」
という方がピッタリだ。
この「動き」の象徴が,
「シラバス」現象。

つい最近まで「国語辞典」に載っていなかった「シラバス」。
かつては
「講義概要」などといっていたが,
1990年代の初頭,
グローバリゼーションの荒波が
大学などにも押し寄せ,
「講義概要」が
カタカナ化して「シラバス」となった。

これが21世紀になり,
モンスター化したのである。
例えば,「達成目標」というのを
書かないと“ドーカツをくう”。

ちなみに「デフレ・スパイラルについて理解する」のが
達成目標というような格好で
書くのをよしとする。
ここで「理解」というのは,
辞書的な説明ができることと同義である。
ということは,カギをにぎるのは
用語を1,2行で定義できるか,どうか。
「デフレ・スパイラル」を含む
現代経済の現象を
体系的に読み解けるか,
というようなことは
最初から想定されていない。
いわばクイズ的に反応できることが
「達成」なのである。

「講義計画」というモンスターもいる。
通年科目であれば,
何をやるのかを30回分,
空白なく書かねばならない。
モンスターたるゆえんは,
カレンダー(学事暦)では
27回分しかとれなくとも,
とにかく30回分書けという点にある。
やら(れ)ないことが明白でも,
ゆるされない。
つじつまあわせ,形だけの世界なのである。
すぐには結果などあらわれず,
時の長~い流れのなかで,
その成果がようやく浮上してくるのが教育だ
ということはもはや視野にはなくなった。
こうした,モンスターとしかいいようのない教育破壊が
猛威をふるっている。
しかし,
アメリカ発のグローバル・スタンダード
という点では,
先の「事業仕分け」の発想と
同一であるにもかかわらず,
このモンスターに対する「異議アリ!」の声は
まったくきこえてこない。
予算という「数字の形」をとる
ものにのみナイーブに
反応する「ナンセンス!」が
花盛りなのである。

菊池遊星の“差異性”2009年12月16日 17:15

つい最近まで見かけていた店が,
閉じちゃったというケースが増えた。
中心部,郊外の別なくである。
結構,客の入りが良さそうだった店も含まれる。
小売店だったり,飲食店だったり。
きょうも,昼食にと行った麺の店が,
別の店になっていた。
個人消費の停滞という,
大状況とは違う観点から
考えてみる必要がありそうだ。

特徴を前面にだしたあげく,
そのアクの強さが災いして,
というのはレアと思われる。
そこそこ売れている店を目標に,
シナリオを描き,
結果がでないというのが,
多いのではあるまいか。
マニュ(まね)アルよろしく
繁盛を夢見るものの,
当然他との差別化には至らず,
沈没してしまうというケースである。

そこで,思い出した。
いささか話は飛ぶが,
1週間ほど前に,
テレビで見た「菊池遊星」。
今年,高校球界を沸かせた
あの高校生である。
甲子園史上,左腕の最速を記録した。
154キロ。
彼は,入団が決まった西武の本拠地に,
先週初めて足を運んだ。
そのとき,
来シーズン西武に戻る工藤公康についても,
質問されていた。

工藤は,通算勝利数224。
46歳。菊池の父親世代にあたる。
江夏と投げ合い,掛布と対峙した実績を持つ。
その大投手についての質問である。

その答えが印象に残った。
「工藤さんから,投球技術,スキルを教えてもらおうとは思いません」
「工藤さんの野球に取り組む姿勢,野球についての考えを学ぶことができればと思います」。
すごい!
実績をあげたものの形をまねるのではない。
秀でたものをいわばメタレベルで知ることが,
肝要であることを見抜いている。
表面にあらわれないことに目をむける見識。
大いに期待したいと思う。

マニュ(まね)アルとは何かを教えてもくれる。
閉店の憂き目を見たものに欠けていたものを示してくれる。

「商い現場」の荒廃2009年12月23日 18:30

10日ほど前。
これまで関心のなかったことに,
つい気持ちが動いた。
それがいけなかった。
というか,社会の土台が,
ここまで傷んでいるのを
またまた思い知らされるはめとなった。

つい魔が差したというのは,
インターフォンの買い替え。
15年あまり使ってきた
インターネットフォンに不具合が生じた。
訪問者の押すチャイムがなる。
インターフォンの受話器をとる。
相手の声が聞こえない。
これが不都合の症状。
こちらの応対する声は相手に届いているものの,
ワンウェイの状態になった。

そこで買い替えを考えた。
しかもテレビドアフォンへの買い替え。
が,これが“間違い”のもととなった。
わがやの場合,
隣家の真裏という位置関係で
わかりにくいので,
訪問者が操作するチャイム(端末装置)は,
外に2機必要である。
道路わきの1機と玄関の1機。
室内の端末も2台。
標準タイプは,外1台,室内2台。
だからちょっとだけ標準からズレる。
この前提のもと,ある家電量販店に赴いた。
ドアフォンコーナーを見つけた。
担当の店員をつかまえ「これこれ,しかじか・・」と伝える。
標準の構成ではなく,
追加オプションとなるだろうこと,
メーカーが複数あるので,
それぞれのメーカーの機種別見積価格を
教えて欲しいことなどを話した。
まずは追加オプションがすべて可能なのかの確認。
この単純なことにものすごく手間取った。
なぜか?
店員の手にしたカタログが,
ドアフォンのものではなかったからである。
これはウソのようなホントの話である。
まさか,全然関係ないものを見ているとは思いもしないから,
気がついた時には嗤うほかなかった。
ようやく全うなカタログに移った。
オプション可能な機種を特定。
メーカー別の価格は,
メーカーに問い合わせる必要があるが,
この日はすでにメーカーの営業時間が終了している
ということで,あらためて翌日電話で
連絡してもらうことに。
翌日電話があった。
Aメーカーの場合はこれこれの価格。
Bメーカーの価格は確認しなかった。
Bメーカーのサイトに出ているのでそこで見て欲しい・・。

むろん,この量販店からの購入は止めた。

日をあらためて別の店に行った。
そこでも見積まで進むのに,
想像以上の時間が要った。
下見があり,
その後契約したものの,
実際の工事は正月明けになった。
何のことはない。
たかがドアフォンの買い替えなのに,
それが一ヶ月もかかる現実。

ものづくりの後景化,
R&D(研究開発)の衰退が,叫ばれるが,
モノを扱う流通現場の崩壊も
すさまじい勢いで進行しているのである。
社会の土台が,である・・Ach!!。