動画ネット配信、無料型と有料型2006年04月24日 06:45

ライブドア支援に乗り出していろいろ話題をよんでいるUSEN。その2月中間連結決算は赤字転落だったらしい(営業利益が4億円―前年同期比91%減―にとどまり、経常損益が19億円の赤字)。無料動画ネット配信(Gyao)が足を引っ張った格好のようだ。配信用の動画調達コストが膨らんだという。Gyaoは、2005年4月のサービス開始以来1年で視聴登録者が850万を超えた。しかし週に1度以上視聴する「熱心な利用者」は300万程度にとどまり、広告主の評価はいま一つで、それが膨張するコストに見合う広告収入に結びつかなかった原因と思われる。

動画ネット配信サービスを無料で視聴するといえば、今月からいわゆるワンセグ(地上デジタルテレビ放送を携帯電話などで受信するサービス)がスタートした。いまのところワンセグ対応のモバイル機器(ケイタイや専用端末)の普及がさほど進んでおらず、これもスポンサーからすれば模様眺めの段階にあるといったところだろう。

他方、動画ネット配信有料モデルの、例えばモバHO。これは衛星を使った世界初の移動体向け放送をウリに2004年10月に本放送を開始したモバイル放送だ(モバイル放送用衛星MBSATの打上げは2004年3月)。東芝、シャープ、トヨタ他錚々たる企業90社が出資企業に名を連ねている。しかし、スタートして1年半、知名度は高いとはいえない。ちなみに私も最近加入契約をしたが、これが結構手間がかかる代物だった。まず仙台の大型家電量販店に行って訊ねてみたのだが、店員が知らなかった。結局、15分ほどの経過の後判明したのは、モバHO用の専用情報端末もノート型PCで使用するPCカードチューナーも在庫はなく注文での取り寄せになるということだった。その数日後、池袋の量販店に行ったが、店員はやはり知らなかった。ただし、総合案内を経て、道を隔てた別棟の店には在庫があることが判明。ようやく手に入れることができたという経緯があった。実際に視聴してみて、有料サービスであるだけに、番組がわずらわしいCMに中断されたり、あるいはネット広告がちらついたりといったことがない分一応は快適といっていい。動画よりも主に音声・音楽を聴くのに利用しているが、全国どこへ行っても同じ放送が聴けるのは有難い。

しかし、これも両刃の刃というべきなのだろう。下手をすればローカルな放送局が、中央の放送局に完全に淘汰される可能性があるし、他方ではローカルな放送局がむしろローカルの固有性を発揮して全国的な拡がりで聴取者を獲得することも否定できないからである(ちなみに、現時点ではいわゆる地方局の番組は流れていない)。とまれ、全国的に(将来的には文字通りグローバルに)いつも同じものを聴く環境――個人が放送を持ち歩く環境――が現実になったのが現在ということだ(実際にBBCやJ-WAVEをよく聴いている)。昔、深夜にhowllingのひどい状態でかすかに聴こえる文化放送や大阪毎日放送を耳をそばだてて聴き入ったのがまるでうそのようだ。