社会的企業(Social Enterprise)2006年05月04日 22:16

今朝の朝日新聞(12版4面 国際)に「社会的企業」のことが取り上げられていた。その紹介によれば、「社会的企業」は、ヨーロッパでは90年代初頭に出現したが、いまだ定説といえるほどの定義はないとのこと。一般的には、地域社会に貢献するという目的を優先しつつ、利益を社会のための事業に再投資する事業体をさすということだ。90年代初頭、スコットランド地方でサッチャーによって炭鉱が閉山に追い込まれ、町に失業者があふれた時に始ったということから推測されるように、「小さな政府」追求の結果生み出された問題をフォローする試みという趣をもつ。営利を求めつつも手にする利益は社会のなかに還元する(障害者やホームレスの雇用、医療や教育サービスの事業化etc.)という意味で注目すべき動きではある。イギリス貿易産業省によれば、イギリス国内で活動する社会的企業はすでに1万5千社を超え、雇用者数は80万人に達するという。ブレアのいわゆる「第三の道」に対応する具体例とも見られるが、要は「小さな政府」によって切り捨てられ、しかも結局のところ「市場」にゆだねることは選択肢として賢明ではない領域をカヴァするものということだろう。もちろん、民間セクターの補完というのも、もう一つの基本だ。そうだとすれば、ほおっておくとあらゆる領域に限りなく侵食する力をもつ、どこまでも膨張する力をもつ市場経済ないし商品経済のコントロール(制御)という枠組みないしスキームがどこにも見当たらないというのが最大の問題というべきかもしれない。市場経済とのたんなる並存としての社会的企業ということなのだろうから。