インドにて―その10(完)2006年09月18日 01:07

いまデリー空港(マハトマ・ガンジー空港)でこれを書いている。日本に帰るJAL機 のフライトを待っている。久しぶりに、ネットにつながった(と前提して書く)。メモしていた4日分も 同時にエントリーする。

インドを離れるにあたってインドについて現地で見 たこと、体験したことを基に簡単にまとめておこうと思う。ひとことで言えば“まだ 先の見えない複雑な社会”、こんな感じになる。その理由はランダムにいえば、以下 のようになる。当地に来る前のイメージの1つが、“IT先進国”。これは間違いでは ないが、決して額面どおりでもなかった。ITの先端は、インド国内には必ずしも向か っておらず、グローバルな企業間ネットワークに取り込まれている、というのが現実 と見た。インド国内の“経済”を牽引するような構造をもっていないととらえるのが正解 だと思われる。雇用吸収力もかつての製造業のようなダイナミズムをもちあわ せていない。インドを“IT先進国”として浮上させたソフトウェア産業は、もっぱら いわゆる先進国の製造業とのコラボレーションの形をとっており、インド国内の製造業 との連関をほとんど持っていない。製造業そのものの基盤が弱いからだ。

したがって、人口11億のうち3億人が極貧層(1日の収入が1ドル以下)という現実を どうにかするというような妙手がすぐ出てくるものではないし、息の長い話ということ になるだろう。ムンバイの空港はスラム街に包囲されているとも聞いた。300万以上の人々 がようやく棲息する地域が延々と続く。まことに衝撃的だ。チャーターバスが信号で とまると必ず窓がたたかれる。窓を叩くのは乳飲み子を抱えて金銭を乞う若い母親。 高級紅茶を求めて街を歩いたときには、一瞬一行から遅れた一人が5,6人のもの乞い に囲まれ、“危なかった”。私も、昨日街を歩いていて珍しくマック(McDonald)があった ので、デジカメを撮るために歩きをとめた瞬間、靴みがき人に“やられた”。汚物 と見えるような(実は人工物だったと思う)ものを靴先に落とされた。デジカメを 撮り終えて歩き出したとたん、靴みがきがさっと近づいてきて素早く靴先をぬぐった と思ったら金銭を要求された。見事な“マッチポンプ”の早業。“無から有を生み出 す”したたかさ。要求された金額は無視したものの“マッチ”をつけた瞬間に気づか なかった負い目は、100ルピー(250円)に値した。彼は瞬間芸で2ドル近 くを手に入れた・・。

道を聞くと、かりに自分は知らなくとも親切丁寧に”教 えて”くれる“親切”を発揮するインドの人たち。相手の窮状をなんとかしてあげたい と思う一種の近視眼的想像力といえばいいか・・。

インドの官僚たちは、1つ の質問に10の答えを延々と展開するとも聞いた。ごく身近な問題なのに、それを解決 するためには、と自らの夢を語る例が多いという。しかも、解決は容易と思われる当の 問題は一向にかわらないのが日常だと。

インドは動物との共生社会。これも実 感した。いわば手の届くところに、牛、象、犬、馬、リス、猿、いのしし、山羊、羊そして様々な鳥を見た。 が、猫を見たのはたった1回。これもミステリアスな現象。猫はペルシャの格をもとめ て西に移動したのか・・!?。インド人は例えばクルマの中に入ってきた蚊を手のひら をあわせてパチンとつぶしたりはしない。窓をあけて外に逃がしてやるのが基本だ。

インドに来て15年というJETROの駐在員(偶然高校の後輩だった)の話も印象的 だった。その1つ。インドでは、論理的に話さないと見下される。つまり、きちんと →で話を継いでいかないと、その都度確認され、そんな状況が続くと、“できない人”と 烙印をおされてしまうという。このあたりにインド“ソフトウェア産業”の正と負、光と影が ありそうに思ったがどうだろう。日常会話のレベルで英語に不自由しない人たちが全体の 2割(2億人弱)。ビジネスやアカデミックレベルで問題のない人は3%(3,300万人)とか。

まことに不思議な社会、これがインドだ。

コメント

_ 三浦真人 ― 2006年10月07日 15:08

インド旅行記(?)楽しかったです。

私が以前、マドラスを訪れた時、
「牛はヒンズー教徒にとって神聖だから
ブタはイスラム教徒にとって不浄だから食さない」
と聞きました。
それで牛やブタが安心して道を歩いているのか、と納得。
(ブタは路上生活者の汚物処理をしていました。)

また、観光地では白人が入れない寺院に日本人は入れる、というので理由を聞いたら
「ブッタはヒンズー教の神の一人だから」とのことでした。

またまた、三輪タクシーは「リクシャウ」でしたよね?
日本の人力車が由来と聞きました。

なんだか、インドの現在には
遥か昔から先端産業産業までの全てが累積しているのですね。
また、行きたくなってしまいました。

お疲れ様でした。

_ Spindletree ― 2006年10月07日 22:32

三浦さん コメントいただき有難うございます。三浦さんは現地の人々に融け込むような形でインドを旅されたようですね。そんなスタイルが本当の旅なのだろうと思います。オートリクシャといえば、今回は結局乗らずじまいでしたので、次の機会にはぜひ、と思います。

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