《架空と現実》―ムイシュキン

昨日の日経。「食あれば楽あり」の日。小泉武夫が薀蓄を傾ける日。毎週楽しみの日である。小泉が、好き勝手に「農」と「食」を語る日だからだ。昨日はとくに印象に残った。

話題はハヤシライス。小泉武夫いわく「両手で皿を持ち上げて匂いをかぐと、そこにトマトが太陽に当たった時に出る太陽の匂い『日向香』が微かにしてきたりする。」と。「日向香」。“ひなたか”、まことにいい表現ではないか。日常的には、例えば「日向臭い」という言い方をするが、これとは全然違った次元の言い方だ。見たこと、感じたことを“にほひ”や“かほり”に喩える妙といえばよいか。そういえば、竹の林が“なにげ”に風にそよぐさまを“細香（ほそか）”という、というのを聞いたことがある。この表現の繊細さがたまらない・・。