軽~くなった「入試願書」2008年01月09日 18:41

私立大の入試願書受付が始まった。最近は夏以降頻繁に様々な入試が行われるので,2月のいわゆる一般入試のウェートはかなり小さくなった。AO入試,推薦入試,スポーツ推薦入試,センター入試,社会人特別枠入試,帰国子女入試などなど。しかもそれぞれが1回だけとは限らないから,その分一般入試が軽くなるというわけである。とはいっても,一般入試の志願者の数がやはり最も多い。その願書受付のピークがまもなくやって来るのである。現在は,ほとんどが郵送。必要書類は,願書だけではなく,在籍(or卒業)高校の発行する調査書,健康診断書,入学検定料(払込済証)に加えて,受験票を送付するための封筒などたくさんある。

ところで,この願書受付に,近時異変が生じているらしい。「らしい」というのは,全国的な現象と見えて,直接にも間接にも同じような話を耳にするからである。例えば,返信用の封筒や受験票となるハガキを入れ忘れたという,昔からあったケースだけでなく,調査書を同封しなければならないことを知らなかったとか,願書の記載が未完成とか,入学検定料(払込済証)だけを送付するなどというのまで,それこそ多種多様な事例があるらしい。大学側はこうした事態を見越して「願書郵送の前に」といった形で必要書類を揃えたかどうかを確認するためのフェースシート(レ点をつけてチェックするようなフォーマット)を準備するようになったが,これがいまの受験生にはあまり意味をなさない。

「粗忽」だとか「早とちり」だとか,そういうレベルの話ではなさそうな,こうした現象は,どうやら「認識」に関わる根本的な問題と見られる。「大学全入時代」に突入して,大学入試なんて「そんなの関係ねぇ」,「どうでもいい」ということになったというのはあるだろう。願書を書き,提出することなどは,最早緊張したり,慎重に対応すべきことがらではなくなったのである。仮に提出書類に不備があったとしても,それが直ちに入学試験が受けられないことにつながることはなく,むしろ大学側がその受験生にお願いして不足のものを「あらためて送っていただく」のが普通になったからである。しかし,もちろん,これだけでは願書提出に伴なう不備が頻繁に発生する背景を指摘したことにはならない。

最近の日本の若い世代は「指示待ち人間」といわれる。しかし,いま前景化しはじめたのは,指示してもそれが認識されることなく,まるで無視(シカト)されるかのような事態にほかならないのである。一体,何が始まっているのだろうか。