幻に終わるか“Kスタ宮城”2008年01月16日 22:41

楽天イーグルスの本拠地になった2004年以来,県営宮城球場は,人材派遣業のフルキャストが命名権を買い「フルキャストスタジアム宮城」と呼ばれてきた。通称フルスタ宮城。それがほぼ1年前に,フルキャストが「労働者派遣法違反」を繰り返していたことが発覚し,結局昨年10月,県は命名権契約を解除した。ロゴ看板の取り外しの様子は,テレビのニュースでも放映された。

そしてあらためて売りに出された県営球場の命名権は,日本製紙が購入し,「日本製紙クリネックススタジアム宮城」,通称「Kスタ宮城」が誕生した。つい1月前のことである。その日本製紙が問題を起こした。と,いうか,問題を抱えていたのがバレた。まずは年賀ハガキの古紙配合率違反という形で。年賀ハガキに使う再生紙の古紙配合率を日本郵政グループは4割と指定したのに対して,わずか1~5%の線で納品した。古紙の配合率を高めると,契約にある紙の品質が満たせないからというのがその言い訳であった。県は,早速命名権契約の解除を言い出すのかと思ったら「フルキャストと違い,明確な法令違反により監督官庁から行政処分を受けたわけではない」(河北新報,11日付朝刊)として,動く様子はない。

しかし今日にいたって,年賀ハガキの件だけではなく,コピー用紙やノート,封筒,製本用の印刷用紙などでも「同様の『偽装』を繰り返していた」(朝日新聞,16日付夕刊)ことが明らかにされた。もしこれが事実だとすれば,国や独立行政法人に100%古紙のコピー用紙の購入義務を定めた,いわゆるグリーン購入法にふれることになる(同)。

この問題は,次のようなことを示唆している。私企業に公共施設の命名権を販売することの意味ということである。Kスタ宮城誕生に際して,県は「日本製紙は,弁護士ら外部の監査を独自に取り入れ,法令を厳しく守る体制を整えている」(河北新報,07年12月22日付朝刊)と明言していた。それから1月も経たないタイミングでの問題発覚。所詮,競争原理に棲む企業というのは,結局のところはループ状となっているオモテの世界とウラの世界をもつと見るのが正解なのではあるまいか。だから命名権を私企業向けに売買するということは,クルクル名称が変わることを自明のこととして受け容れることにほかならないということになる。記憶力が低下した者にとってはスポーツ施設の名称さえおぼつかない状況になったのである。