コピーで学生が釣れる?2008年02月11日 23:11

キャッチコピーを仕掛ける大学が増えているという。朝日新聞に出ていた。「他大学に比べて優位な点や特徴、目指す方向をひと言で示すことによって受験生や父母らに浸透を図り、大学間競争に勝ち抜こうとするねらいがある」からとある。ホントだろうか?そんなこと本気で考えているのだろうか?たぶん、マジなんだろうな、と思う。大学という共同体を、商品としてのサービス提供の場ととらえた上で、ビジネスにつきもののキャッチーなコピーで売り込めると真面目に考えていると思われるからである。

紹介されているのは「面倒見のよい大学・入って伸びる大学」「個性を持った自立的な人間創造」「触れて温かい都市型大学」「『個』を強くする大学」「好きなことで、一番になろう」「強く、優しく」などなど。こんなので「入りたい~」「ここでお勉強したい~」と思う高校生がいたら、「わが子に学ばせたい」と希望する親がいたら会ってみたいものである。

つい最近、勤務先でも、2009年の新学科スタートに向けた「コピー案」が示された。それも3択で。「明日を読み、なりたい自分への路を切り拓く」「明日を読み、今日を知り、なりたい自分への路を切り拓く」「今日を知り、明日を考え、なりたい自分への路を切り拓く」。どれがいいかというのである。もはや、イエモンの「JAM」の一節を思い出すほかなかった。「ぼくは何を思えばいいんだろう。ぼくは何といえばいいんだろう・・」と。

「感動のライフライン」「価値創造パートナー」「最強のマネジメントを基盤としたコンテンツ制作」。この3つはどこの謳い文句かおわかりだろうか?そう、順番に「ぴあ」「電通」「吉本興業」である。さすが!だって?Ach!

“農婆”破綻2007年10月28日 22:13

90年代の初め,設立間もないNOVAが,「NOVAおばさん」のTVCMを流し,世の耳目を集めたことがあった。NOVAと“農婆”の組み合わせが,確かに今も記憶に残っている。その数年後,早稲田小劇場上がりの山崎一が,「NOVAの“鈴木さん”」でCMデビューし,瞬く間に広く知られるアクターになった。要するに初期のNOVAには人の目を奪う勢いがあった。そのNOVAが,受講料をめぐるトラブルが引き金になって経営破たんに追い込まれた。一昨日「会社更生法」の適用を申請したという。受講料をいわゆるクレジット会社を通じて分割で先払いするビジネス・モデルがはらんでいる問題が一挙に表面化した格好だ。債務総額450億円弱。契約の残っている受講生30万人。路頭に投げ出された講師(外国人講師)4,000人。すさまじい数だ。

経営再建の支援企業の候補として,流通企業とIT関連企業が上がっていることがいささか関心を呼ぶ。具体的には,丸井グループやイオンなどの流通企業と楽天,ヤフーといったIT企業。「丸井,丸井は駅のそば」を久しぶりに思い出した。駅のそばにある丸井で“駅前留学”というわけか・・。ともあれ,“留学”勉強したあとはお店でお買い物,というのが魂胆なのだろう。他方,楽天,ヤフーはそれぞれ楽天トラベル,ヤフートラベルをもつ。海外旅行と“駅前留学”とを連動させたいというのがそのネライということか。もちろん,ネットで“英会話勉強”という,もはや駅前に行かずとも“勉強”ができる環境というウリもある。とすれば,支援企業はネット企業のいずれかになるのではあるまいか。果たしてITで瀕死の“農婆”は救えるか。

若者のクルマ離れ,その2.2007年10月25日 23:00

クルマの話題を2つ。27日から一般公開される東京モーターショー。メーンテーマは「環境」。昨日,報道陣に一足先にお披露目された模様がTVで取り上げられていた。ハイブリッド車,次世代型エコカーである燃料電池車や電気自動車がずらりと並ぶ。しかしテレビのナレーションは,若者のクルマ離れを淡々と伝える。特に東京圏の若者たちのライフスタイルにおいてはクルマが前景に出ることは完全に消えた,と。若者の4割以上が,クルマは単なる乗り物に過ぎないとみるようになった,と。デート必需品と考える者にいたってはわずか1%。クルマを買うだけの余裕があったら海外旅行に行くという男の子の屈託のないインタビューが印象的だ。数ヶ月前にも「クルマが売れなくなったらしい」「若者がクルマを見限ったらしい」とここにエントリーした。それが,クルマ市場にとってはヨリ深刻化しているらしい。今回の報道で目についたのは,プジョーならぬ,ボディを触った時のぷよぷよした感覚を表わしたというホンダの「PUYO(プヨ)」

もう1つが,トヨタグループのセントラル自動車(相模原市)が,仙台市近郊の宮城県大衡村に本社および工場を移転すると発表したこと。2010年がメドとのことだが,これだけの規模の工場新設は国内では20年近くなかったらしい。クルマは,産業連関が広く,それだけ経済効果が大きいといわれる。現在は部品メーカーの立地がほとんどない状況のなかで,この産業連関の強さが要求する格好で部品メーカーなども立ち上げるのだろうか。

東京圏の若者のクルマ離れのライフスタイルを考えれば,3年ほど前に仙台を拠点として,いまや旬の過ぎたスポーツ(プロ野球)に進出した「楽天」の思惑とダブって見えてくる。

フリーソフトウェアの配布2007年08月17日 22:29

Googleが「スターオフィス」をフリーで提供し始めた。「スターオフィス」は、サン・マイクロシステムズがマイクロソフトの統合型ソフト「オフィス」に対抗して開発したソフト。価格は約70ドル(8千円前後)。これをGoogleが、フリー(無料)で使える環境を提供する。マイクロソフトの「オフィス2007」が5万円弱(いわゆるアカデミック版でも3万円弱)であるのと比べれば、はるかに廉価ではあるが、ユーザーからすれば無償配布というのは驚きであり、使い勝手の優劣という次元を超えて鞍替えしたいと思うものもかなりいるのではないか。むしろマイクロソフトの各種ソフトの使い勝手に対して不平・不満を持つものは少なくない現状からすれば、ソフトウェアの地図が一変するかもしれないとの予測も立つ。マイクロソフトの売上げの1/3を占めているのが「オフィス」といわれる。その主力商品に真っ向から立ち向かうという構図なのである。

Googleは最近、本社ビルの消費電力の3割を自家発電(太陽光発電)に切り替えたことでも話題をよんだ。従来型の電力に対する依存度を下げ、環境を意識しつつ、あたかも工業時代の企業モデルとの差異化・差別化にとくに力を入れているかのように見える。しかし、統合型ソフトを無償で配布する真のネライはどこにあるのか。サン・マイクロシステムズは、Googleに対して料金を請求することを決めている。と、すれば、Googleはその対価をどこに求めるというのだろうか。おそらくはネット広告との連動ということになるだろう。私たちは、こうして広告が広告として意識されず、ごくあたりまえの風景となり、したがってビジネスが即自的に入りんだ日常そのものが企業によって構成され、その生活日常を生きることになる。以前、「フリーペーパー隆盛の行く末」をエントリーした。 その末尾に「れっきとした本を広告付きで無料で配る試み」の広がりを危惧した。と、いうより、実はあまりリアリティはないだろうとたかをくくって書いた。しかし、それがソフトウェアの形で現実となったのである。