朝日が「偽装請負」を取り上げた2006年07月31日 17:26

今朝の朝日新聞。1面トップ、2面および社会面をつかって「偽装請負」を取り上げた(Webではこちら)。メーカーが製造(の一部)を委託し、請け負った会社がものをつくり、納品する。これが「請負」業務であるが、「請け負った会社」は労働者の送り込みだけをやり、実際にはメーカーの正社員が指揮命令を行なう、というのが「偽装請負」だ。形式上は労働者派遣法の対象となるような内実でありながら、あくまでも「請負」を装う手口にほかならない。仮に実態にあわせて「派遣」にしてしまうと、一定期間経過後にはメーカーに直接雇用の義務が生じて、人件費アップにつながることからこうしたやり方が増えた。日本製造業の復活とか国内回帰とか注目されつつある動きの背後で浸透するこのような「姑息な手法」が、全国紙で取り上げられたのは始めてではないか。

朝日の記事によれば、「偽装請負」の現場は、ハイテク製品を製造する最新鋭工場というケース が少なくない。働く労働者は、そのほとんどが20代から30代半ば。ボーナス、昇給はほぼゼロ。給料は正社員の半分以下。社会面にある記事の末尾にある、請負会社幹部がもらしたというせりふが衝撃的だ。「最近の若者は、実力主義を『時給が100円高くなる工場へ移ること』と、はき違えていたりする。一生こんな賃金で使われ続ける彼らの将来はだいじょうぶかねえ。我々にとってはありがたい存在だけど・・」。

グローバリゼーションの進展の下、雇用関係にまことに古典的な(19世紀的な)市場原理主義が蔓延する現実。「○○○、命」(○○のところは企業名)と、労資一体になって企業間競争に精を出すのが珍しくなかったかつての「企業共同体」。いまや〈労〉の圧倒的多数はモジュール化され、いつでも着脱=解雇可能なまことにひ弱な存在となった。例えば人件費が日本の10分の1といわれてきた中国企業の競争力の強化、研究開発力の向上。こうした現実に対応するために、日本のハイテク企業が、事実上技術移転をともなわざるをえない海外 進出からの転換を迫られ、それが国内回帰として具体化した結果が〈労〉の使い捨てということなのだろう。もちろん、「企業共同体の解体」ということは、いまは正規雇用者であっても、明日のわが身は不明というべき状況のなかにおかれていることを意味しよう。「・・一生こんな賃金で使われ続ける彼らの将来はだいじょうぶかねえ・・」とうそぶく請負会社幹部にとっても決して他人事ではないと知るべきだ。