瞬間視聴率56%をどう読む?2006年03月23日 23:42

王ジャパンVSカストロキューバの試合のテレビ視聴率が43.4%台で、瞬間最高視聴率は56%に達した という。祭日の昼、という条件だったとはいえ、今どき異常な数字というべきだろう。準決勝の試合(日・韓戦)も、視聴率36.2%、瞬間最高視聴率50.3%と高かった。そういえば先のトリノ五輪の、荒川静香が金メダルを獲得したフリー演技の視聴率も早朝6時という時間帯にも関わらず世帯別平均視聴率は、31.8%(関東地区)、瞬間最高視聴率43.1% とイジョーだった。しかし「荒川の金」はまだ1カ月しか経っていないのに、大分前の出来事のように思われる。つまり、マスメディアも追っかけるのはもう止めたといってよさそうだからだ。ここに異常な数字の謎を解くカギの1つがあるように思う。「絵になるターゲット」を虎視眈々とねらいながら、これだ!と思ったものは、逃さずに捕まえ、そして徹底的(テッテ的)に、しかも短期間にしゃぶり尽す。これが潮流となっている。まさにマスメディアの早業が、ありとあらゆる「コト」を瞬間的消費の対象へと転位させているのである。視聴者という名の消費者は、この構造に完全にはめ込まれているといってよい。生活日常においては「私主義」を気取っている今のひとたちが、実は本心では「私」一人ではたちゆかないのではないかと感じており、それをマスメディアの流す映像をリアルタイムにみつめる「私」と同様なヒトたちが大勢いると想うことで解消する、といえばいいだろうか。「私主義」、「個」に分解された「私」であることがメインストリームであるがゆえに、求めるアイデンティファイのよりどころが1つのものに収斂してしまう逆説がここにある。もちろん、消費の対象として好まれるのは「瞬間的、一時的」なものという現在の消費構造も大きなファクターではあるだろう。そういえば1月4日の朝日新聞(朝刊) に、「毎週毎週のお楽しみ」ということでかつては人気があったテレビの連続ドラマ、週刊誌、マンガ雑誌がいまや軒並み低迷しているという記事が出ていたのを思い出した。まさに「この瞬間この瞬間」だけが関心を呼ぶというふうになっていることを抉った特集記事だった。効率(同じコトをより短時間に!)、競争(ほかよりも早く!)、差別化(一瞬でも他との違いを!)が「意味をもつようにみえる」現実がなせるわざ・・。