「株主支配」で超巨大鉄鋼メーカーの誕生2006年06月27日 22:51

世界鉄鋼最大手のミタル・スチールによる同2位のアルセロール買収が成立した。今朝の新聞各紙が一斉に報じた(Webでも)。 新会社の従業員は32万人。年間の粗鋼生産量1億1500万トン。同売上高690億ドルは、ゆうに7兆円を超える。この買収劇についての注目点は以下のようなことだろう。

ミタルの創業は、わずか30年前。インド西部が発祥の地という。巨大企業に成長した背景が、もっぱら途上国で経営危機に陥った鉄鋼メーカー(多くが国営企業)を安く買い入れ、これを再建するという手法だったとのこと。

したがって、従来、同社の製品は、建材などの低価格品が主だったが、高級鋼を手がけるアルセロールの技術を我がものとできるというのは大きい。

と、いうことは、自動車向けなど高級鋼生産の割合が高い日本の鉄鋼メーカーにとって脅威になるのは確実だろう。

つまり、日本のメーカーが、明治以来1世紀にわたって磨き上げ、洗練してきた鉄鋼技術の真価が問われることになる。価格こそが最終的指標、というグローバリゼーション(としての市場至上主義の浸透)の真っ只中において日本の鉄鋼企業の存在そのものが俎上にのせられる。

その際、今回の買収劇がいわゆる敵対的株式公開買い付け(TOB)が功を奏して成立したことからも推測されるように、“仁義なき戦い”のグローバル・バージョンが顕わになることも見逃せない。

この動きを支えたのが、ほかならない「アセロールの株主」が、ミッタールに よる1株あたりの高値提示にスィッと惹きこまれたからであった。「株主支配」という企業統治(コーポレート・ガバナンス)が演出したというわけだ。

日本でも、来年から外国企業による株式交換を通した「三角合併」をみとめる規制緩和が始まる。これまではこうした「三角合併」ができなかったがゆえに、外国企業による日本企業の買収には巨額の現金が必要だった。いよいよ「製造立国」日本がグローバリゼーションの荒波に無防備にたつことになる。製品の競争だけでなく、企業そのものの買収競争も焦点になる。要は、疲れを知らないものだけが「勝つ」、これがグローバリゼーションということだ。いやだね・・。そうだ、アルセロールにそでにされたロシア(のセベルスタリ)のリベンジというのも忘れちゃだめだった・・。