ユートピア経営の「未来工業」2006年11月13日 21:25

一昨日の朝日(朝刊)にちょっと興味をそそられる記事があった。「ユートピア 経営」と評判の岐阜県の「未来工業」を紹介したもの。 同社は「上場企業(名証2部)では日本一休みが多い」とか。電気設備資材やガス設備資材・OAフロアの製造販売を手がけるこの企業のユニークさをざっとあげておこう。

定年は70歳。ものづくりなのにノルマなし。休み日数年間約140日(週休3日に近い)。勤務時間は8時半~16時45分。残業ナシ。育児休業3年。給与は年功序列で水準は岐阜県庁並。収益率(売上高に対する経常利益率)は同業他社の倍以上。これは、夥しい数の新製品を生み出す開発力による。これまでの発明新商品の数は1万8千種類を超える。大手問屋をカットし、工事業者とは直接取引。モチベーションを保つ提案制度(報奨金あり)。行き先を伝えないミステリーツアー風の社員旅行。制服なし、年1回の衣服代手当。タイムレコーダーなし。勤務中の私用電話やお菓子もOK。管理職は、上場した91年、社員名を書いた紙片を扇風機の前に置いて、飛んでいったのから先着順に決定etc.。

ホント、面白い。最近流行の成果主義、能力主義などとは正反対をめざす。かつて日本にも存在した企業共同体がそっくり残っているような趣きをもつ。朝日の記事は、以下のごとくさらに注目すべきことを指摘する。

ユニーク経営の原点が、演劇にあるということ。これは、社長がかつて劇団を旗揚げしたが、「演劇は、演じる側が感動できなければ、お客も喜ばない」ことを痛感したのがきっかけだったとのこと。「高価格でもお客に納得してもらうことが大切」という認識が基本になった。こうした「未来工業のやり方をまねて失敗した経営者もいる」というのも非常に示唆的。いわゆる経路依存性の議論にも通ずるものがあるように思われるからだ。

いつか、NHK(だったと思う)テレビが、この「未来工業」を映し出していたが、工場のなかは暗かったのが印象的だった。“暗い”というのは、物理的な明るさ(電灯)を最小限に抑えているから。とにかくいまどきの工場からみればとってもユニークだ。人を惹きつけるものをもっている。市場経済は実はこんなふうに多様になれるということだ。