「佐藤優という『罠』」(『アエラ』)の面白さ ― 2007年04月16日 19:57
今日発行の『アエラ』に、「佐藤優という『罠』」という記事がある。
一昨年、佐藤のデビュー作『国家の罠』(新潮社)を手にし、読み始めて
一気にしまいまで読み通したことを思い出した。佐藤は、いわゆる鈴木宗男スキャン
ダルの一環として東京地検特捜部によって逮捕されたのであったが、取調べ
の模様、東京拘置所での詳細を描いたのが『国家の罠』だった。「国策捜査」
なるタームを日常語に高めた本でもある。今回『アエラ』が取り上げた
のは、いまではあらゆるメディアが佐藤に執筆や出演を依頼し、
一ヶ月の原稿本数が40本に達するという現実の因って来たる所以をさぐり
あてようというところから。で、佐藤の何が、メディアを、したがって読者を
ひきつけるのか、といえば柄谷行人の解説では、外務省で諜報の仕事を知り尽くした
こと、マルクスの著作についての半端じゃない造詣、キリスト教への深いかかわりとのこと。
これらにロシア、母のルーツ沖縄を加えれば佐藤の全貌が見えてくるということらしい。
これら佐藤を構成するもの
は、現代という時代、現代という社会からすれば、すべて《周辺/周縁》に位置している、ことに
気づく。いま読書する人々にとっては、新自由主義とかアメリカとか経済産業省(旧通産)といった《中心》にあるテーマが関心の対象になっているわけではないことを示している。
ここが面白い。もちろん、アエラの記者が「外務省の3人に取材したが、佐藤より高位のエリートであるにもかかわらず、彼の名前を出すと、一様に腰が引けた。まるで『佐藤の罠』にはまったように」という状況を消費すべく、佐藤の書いたものに数多の読書人が殺到するということもあるにちがいない。とはいえ、「佐藤優という罠」それ自体も賞味期限が画されているとみるべきなのかもしれない・・。
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